最近聴いたCD

チャイコフスキー:
交響曲第3番 ニ長調 「ポーランド」

ウラジーミル・フェドセーエフ指揮  モスクワ放送交響楽団


チャイコフスキーの6曲の交響曲中、唯一長調で書かれた作品。

ただ、評価は6曲中最も低く、演奏される機会も最も少ないとか…。

初演から数年後、ロンドンで演奏された折に、

聴衆の興味を惹くために、第5楽章:Alla polacca(ポロネーズ風に)にちなんで、その起源となる国名「ポーランド」という副題を付けたそうですが、

それが、今日にまで受け継がれているとか…。

でも、この副題と第1〜4楽章の曲想とが乖離するために、逆に今一つ人気がでないような気もするのですが…。


それはともかくも、第1、2番ではロシア民謡を用いた民族的要素に重点が置かれていますが、

第3番では、ロシア民謡をモチーフとすることから脱却しつつ、

ドイツ的な音楽を模索するかのような趣が、随所に聴き取れます。

流麗でメランコリー、そして洗練された、後年のチャイコフスキーらしさには未だ至ってはいませんが、

逆に、若々しさと、地味で素朴な味わいが共存しています。

過渡的な作品という位置付けになるのでしょうが、

フェドセーエフの演奏は、一聴してまとまりに欠けるこの作品から、チャイコフスキーのみが書き得た魅力を、見事に掬い取ったもの!


【第1楽章:Introduzione e Allegro:Moderate assai-Allegro billante】

凍てついて荒涼とした土地を歩むような序奏部と、

一転して、木々の葉が散り終えた、晴れやかな晩秋のひとときを思わせる主部との対照が印象的!

未成熟ながらも、力強さの中に若々しく瑞々しい抒情が展開されていきます。


【第2楽章:Alla tedesca、Allegro moderate e semplice】

「ドイツ風に(Alla tedesca)」と記されたこの楽章ですが、

ピッチカートで刻まれる武骨で素朴なレントラーには、どこか庶民的な親しみが…。

落ち着きなく動き回る中間部は、妖精が飛び回る森のような趣が感じられます。


【第3楽章:Andante elegiaco】

夜のしじまに包まれて、一人物想いに耽るような趣の第1主題。

第2主題は、一層深い情感を湛えた夢見るような世界が…。

様々な管楽器の効果的な響きが、しみじみとした感動をもたらしてくれる名演です!


【第4楽章:Scherzo:Allegro vivo】

これは、第2楽章以上にファンタジックで、メンデルスゾーンの「真夏の夜の夢」の妖精が飛び回る世界?

それとも、月明りに照らされて舞う粉雪?


【第5楽章:Allegro con fuoco】

華やかなりしロマノフ王朝の、宮殿舞踏会を思わせるような曲です。

この交響曲完成後に、チャイコフスキーは「白鳥の湖」作曲に取り掛かったとか!

終楽章もそうですが、第3楽章なんかも、バレー曲として成り立つような…。

フェドセーエフのCDを聴いて、この曲の良さに気付いた次第です!

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