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J.ブラームス:ヴァイオリンソナタ第2番 イ長調

O.デュメィ(ヴァイオリン)  M.J.ピリス(ピアノ)


53歳の夏、友人の詩人に勧められて、アルプスの雄大な自然に囲まれたスイスの景勝地トゥーンに避暑に訪れたブラームスは、

当地の風土が気に入り(以降3年間、当地で避暑生活を送りました)、人間関係にも恵まれて、心穏やかな日々を送ります。


今日エントリーするヴァイオリンソナタ第3番は、

そんな幸福な避暑生活を送りつつ、

当時彼が好意を寄せていた歌手のヘルミーネ・シュピースの到着を待ち焦がれながら、創作に励んだと言われており、

抑制された感情の中にも、夢見るような憧れや喜びが滲み出た、そんな作品が書き上げられました。


この曲の演奏を幾つか聴きましたが、デュメィ/ピリスによる演奏に、最も滋味深い味わいを感じます。


【第1楽章:Allegro amabile】

冒頭にピアノで登場する愛らしい第1主題は、ヘルミーネのために書いた歌曲op.97-5“Komm bald(早く来て)”と関連しているそうですが、

そこに、打ち震えるようなヴァイオリンの音色が、ため息のように忍び寄ります。

少しテンポを落として、夢見るような表情で歌われる第2主題は、

同じくop.105-1“Wie Melodien zieht es mir leise durch den Sinn”との関連が指摘されます。

穏やかで、憧れに満ちた第1楽章です!


【第2楽章:Andante tranqillo-Vivace】

さりげなくシンプルな旋律が、2つの楽器で仲睦まじく進行していくAndante部分。

嬉々として語り合うようなVivace部ですが、反面泡沫のように儚く消え去るような趣も感じられる演奏です。


【第3楽章:Allegro grazioso】

少し憂いを帯びた深々とした音色で開始される終楽章は、次第に力強く、逞しさを増していきます。

深々とした感動が、喜悦感へと高まり、安らぎへと昇華されていく、

そんな、心に浸み入る名演奏!


このコンビ、嘗て大阪の「いずみホール」で聴いたことがあります。

長身のデュメィに対し、彼のお臍ぐらいしか身長のない小柄なピリスの凸凹コンビでしたが、

このブラームスでの息の合った、しかし随所で丁々発止とした演奏は、その時の感動を蘇らせてくれました。

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