それまでの3倍近くの年収が保証されることになり、経済的には安定した生活を送ることが可能となりました…。
今日エントリーする弦楽セレナーデは、そんな心身共に満ち足りた時期にあった1875年の5月3〜14日、僅か2週間足らずで書き上げられた作品。
静謐で慎ましやかな、作曲家の人柄を偲ばせるような佳曲であり、
彼の初期の作品中では最も愛好されているようです。
カラヤン/ベルリン・フィルによって1980年に収録されたもの…。
弦の響きの美しさにうっとりする、そんなひとときを満喫できる演奏です。
【第1楽章:Moderate】
ヴァイオリンとチェロが、忍び寄る秋の気配を漂わせつつ歌い交わす冒頭部の、静謐な美しさ!
いきなりカラヤン美学の神髄を思わせるような響きに、惹き込まれます。
愉しげな日々の生活が偲ばれる、穏やかな音楽が奏でられていく第1楽章…。
【第2楽章:Tempo di valse】
ボヘミアの民族色を感じさせる優美で華麗なワルツで開始され、力強いマズルカ調に移行する主部。
中間部は、想い出を回想するような趣きが…。
そこはかとなく懐かしさを覚える、ノスタルジックな音楽です。
【第3楽章:Scherzo.Vivace】
カノン風に展開される生き生きとした第1主題は、収穫の歓びを表わしているよう…。
第2主題は、対照的に静かな満足感に浸る悦びが…。
中間部は、休息の時の心地良いまどろみを覚える音楽です。
【第4楽章:Larghetto】
懐かしい追想に耽るような、深く豊かな表情が込められた夜想曲風の楽章!
中間部は、そんな夢のひとときを打ち破るような一陣の風…。
夜想曲のような趣を湛えた音楽です。
【第5楽章:Allegro vivace】
前4楽章から一転して、唐突に喜びが爆発するように開始される終楽章は、活力に溢れたロンド風の舞曲が展開されていきます…。
途中、回想するようにチェロが第4楽章の主題を、
コーダ前には第1楽章冒頭の主題が奏でられ、
全てを肯定するかのように、華々しく終わります。
より地味な郷土色を感じさせる演奏も、捨てがたい味わいを持つものですが、
そういったものとは一線を画し、華やかさと静謐さを併せ持ったカラヤンの演奏に、私は惹かれます。