スペイン内戦(1936-39)によって荒廃化した、スペイン王室の宮殿や庭園のある古都アランフェスに佇みつつ、
往時の栄華を偲び、平和を祈って書かれたとされる作品。
盲目のピアニストであり、ギターは専門外だった(?)と言われるロドリーゴが、敢えてギター協奏曲に拘ったのは、
スペイン民族の象徴とも言われるこの楽器によって、作品を語らせたかったからだと、言われています。
崩壊した祖国への悲しみ・怒りや、平和を希求するテーマを扱った様々な芸術作品、
例えば、ヘミングウェイの「誰がために鐘は鳴る」、ピカソの「ゲルニカ」、カザルスの演奏するカタロニア民謡「鳥の歌」等と並び、世界中にあまねく知れ渡ったこの曲、
とりわけ第2楽章は、一度聴けば忘れられないほどに印象的な、哀愁漂う美しい旋律を有したもので、
ポピュラー音楽等にも編曲されています。
超有名曲の割には、私のCD棚には、カルロス・ボネルのギター&デュトワ/モントリオール管の演奏しかありません。
クラッシックのジャンルを超えて、多岐にわたって聴く機会が多いために、
わざわざ比較試聴したいとは思わなかったからです…。
そんなCDを、珍しく第1楽章から通して聴くことにしました。
【第1楽章:Allegro con spirito】
軽やかなギターの爪弾きで開始される、ウキウキとしたオープニング。
ギターをはじめ、木管・金管たちが、鳥の囀りのように愉しく語らう中、
スペイン情緒に溢れた旋律が歌われる、
この上なく幸福感に満ちた楽章です。
【第2楽章:Adagio】
ギターの伴奏に乗ってイングリッシュホルンが哀愁漂う有名な旋律を奏で、
それを受けて語るギター・ソロは、往時の栄華を偲ぶ吟遊詩人の歌!
管楽器が思いの丈をこらして歌う中、
夜の深まりとともに、忍び寄る寂寥感…。
幻想的な雰囲気に覆われた、古都の夜の美しさが髣髴される演奏です…!
【第3楽章:Allegro gentile】
愉しげなギターの爪弾きではじまり、やや翳りを伴なった鼻歌のような旋律に、様々な合いの手が加わる終楽章は、
天真爛漫なスペイン情緒と仄かな哀愁が感じられる、味わい深い演奏!
この曲に関しては、評価の対象とされることの少ないデュトワの演奏ですが、
全曲を通して静謐な情緒の中、穏やかなメッセージ性が感じられる、好ましいものだと思いました。