民族的な色彩が強く感じられる作品ですが、
主題は民謡をそのまま用いたものではなく、全てバルトークの自作によるもの。
5つの舞曲と終曲によって構成されており、
曲間は、リトルネロ形式により、ハンガリーののどかな田園風景を想起させる旋律をはさむことによって、
パストラールな雰囲気の下、オムニバス風に進行する形をとっています。
イヴァン・フィッシャー指揮するブダペスト祝祭管の演奏は、ハンガリーの農村の雰囲気や、同民族の大らかさや情熱に溢れたもので、
バルトークの民族音楽研究の集大成という位置付けが、強く印象づけられる名演と思います。
【第1曲:Moderate】
ほろ酔い加減のご機嫌なオジサンが、次第に踊りに熱狂していく姿を思わせます。
ハープのグリッサンドで開始されるリトルネロでは、雰囲気は一変し、まどろみへと誘われていくような、心地良い倦怠感が…。
屈託のない、素朴な農民の姿を見るような佳曲です。
【第2曲:Allegro molto】
荒々しいまでにエネルギッシュなリズムと旋律は、豪放磊落な農民の姿を表わしているのでしょうか。
【第3曲:Allegro vivace】
独特のステップを感じさせる軽快な舞曲が展開されます。
その軽やかさと旋律が、爽やかな大気感を醸すよう…。
リトルネロなしで、そのまま第4曲へと続きます。
【第4曲:Molto tranqillo】
シャーマニズムの世界を思わせるような、幻想的な静寂が漂う舞曲…。
第5曲と共に、自然への畏敬を表わしたもののように思えます。
【第5曲:Comodo】
巨人の歩みを思わせるような音楽。
北欧やギリシャを始めとして、世界各地に巨人伝説が存在し、
現に私が住む軽井沢や、近在の八ヶ岳にも巨人伝説があります。
この曲も、大自然に対する素朴な畏敬の念を表わしているのでしょうか。
【終曲:Allegro】
戦闘的なリズムと、金管の雄叫びで開始され、それぞれの舞曲やリトルネロが回帰する趣は、
のどかな自然や人々の陽気さが戻り、祝典的な雰囲気を盛り上げるよう…。
バルトークはこの作品を振り返って、「ハンガリーと周辺諸国民との連帯の意図を込めて作曲した」とか…。
終曲は、彼のそんな意図が鮮明に表現された、力強い曲だと思いました。