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バルトーク:舞 踏 組 曲

イヴァン・フィシャー指揮  ブダペスト祝祭管弦楽団


1923年、ブダペスト市政50周年記念の音楽祭のために依頼されて、書かれたもの。

民族的な色彩が強く感じられる作品ですが、

主題は民謡をそのまま用いたものではなく、全てバルトークの自作によるもの。

5つの舞曲と終曲によって構成されており、

曲間は、リトルネロ形式により、ハンガリーののどかな田園風景を想起させる旋律をはさむことによって、

パストラールな雰囲気の下、オムニバス風に進行する形をとっています。


イヴァン・フィッシャー指揮するブダペスト祝祭管の演奏は、ハンガリーの農村の雰囲気や、同民族の大らかさや情熱に溢れたもので、

バルトークの民族音楽研究の集大成という位置付けが、強く印象づけられる名演と思います。


【第1曲:Moderate】

ほろ酔い加減のご機嫌なオジサンが、次第に踊りに熱狂していく姿を思わせます。

ハープのグリッサンドで開始されるリトルネロでは、雰囲気は一変し、まどろみへと誘われていくような、心地良い倦怠感が…。

屈託のない、素朴な農民の姿を見るような佳曲です。


【第2曲:Allegro molto】

荒々しいまでにエネルギッシュなリズムと旋律は、豪放磊落な農民の姿を表わしているのでしょうか。


【第3曲:Allegro vivace】

独特のステップを感じさせる軽快な舞曲が展開されます。

その軽やかさと旋律が、爽やかな大気感を醸すよう…。

リトルネロなしで、そのまま第4曲へと続きます。


【第4曲:Molto tranqillo】

シャーマニズムの世界を思わせるような、幻想的な静寂が漂う舞曲…。

第5曲と共に、自然への畏敬を表わしたもののように思えます。


【第5曲:Comodo】

巨人の歩みを思わせるような音楽。

北欧やギリシャを始めとして、世界各地に巨人伝説が存在し、

現に私が住む軽井沢や、近在の八ヶ岳にも巨人伝説があります。

この曲も、大自然に対する素朴な畏敬の念を表わしているのでしょうか。


【終曲:Allegro】

戦闘的なリズムと、金管の雄叫びで開始され、それぞれの舞曲やリトルネロが回帰する趣は、

のどかな自然や人々の陽気さが戻り、祝典的な雰囲気を盛り上げるよう…。


バルトークはこの作品を振り返って、「ハンガリーと周辺諸国民との連帯の意図を込めて作曲した」とか…。

終曲は、彼のそんな意図が鮮明に表現された、力強い曲だと思いました。

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