昨夜は、布団なしでベッドに寝っ転がるだけで、身体が汗ばんできましたので、
止むを得ず「切・タイマー」をセットして、扇風機をかけて寝入ってしまいました…。
案の定、朝目覚めると、身体が気だるく感じられます。
蝉の鳴き声が、暑い一日を予感させるよう…。
こんな朝、無性にホルンの響きが聴きたくなって、ベートーヴェンの六重奏曲(弦楽四重奏と2つのホルンの為の)を手にしました。
VPOの名コンマスとして知られた、G.ヘッツェル率いるウィーン室内合奏団の演奏です。
ヘッツェルの奏でるヴァイオリンの爽やかな音色と、心地良いテンポ感を聴くと、心が洗われたように清々しい気持になります。
しかし、彼がウィーン室内合奏団の名で残したCDは、DENONに残された4枚だけ…。
このディスクを録音した直後の1992年7月、ザルツブルグで登山中に、不慮の事故に遭い、帰らぬ人となってしまいました。
残されたモーツァルトのディヴェルティメント第15・17番の名演奏から推して、
彼の弦楽四重奏・五重奏などが残されていれば、間違いなく私の愛聴盤になっていただろうと想うと、残念で仕方ありません!
ところで、ベートーヴェンの作曲家としての初期、25歳の頃に書かれたとされるこの作品、
主題・形式ともに古典的な枠組みを保っており、斬新さは希薄と言わざるを得ないでしょうが、
作曲家としての若々しく瑞々しい感性が横溢したもの。
中期以降の深遠さを求めることこそできませんが、聴くほどに初々しい感動が得られる見事な演奏に仕上がっています!
【第1楽章:Allegro con brio】
最初こそ、とぼけた牧歌的なホルンの響きと、清らかな水の流れのように透明で美しい弦の響きとに違和感を覚えたのですが、
次第に両者の響きが溶け合っていき、見事なアンサンブルを醸し始めます!
中間部のホルンの美しい響きが、とりわけ印象的。
【第2楽章:Adagio】
ホルンが主役を演じ、弦がわき役的に美しい表情付けをするこの楽章は、
暮れなずむ空に映える残照のように、しっとりとした穏やかな寛ぎの時を思わせる音楽。
深い情感が漂います…。
【第3楽章:Rondo;Allegro】
前楽章と同様に、ホルンがイニシァティヴをとって奏される終楽章は、
狩の合図のような、或いは舞曲風とも感じられる伸び伸びとしたホルンの旋律と、
それに愉しげな表情付けをする、弦楽器たちとのアンサンブルが絶妙な演奏!
よく言われる、ウィンナ・ホルンの響きのみが醸す世界と申して、差し支えないでしょう。
この曲に関しては、特に演奏の素晴らしさを強調したいと思います!