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F.リスト:
シラーの「ウイリアム・テル」より3つの歌

D.フィッシャー・ディースカウ(バリトン)  D.バレンボイム(ピアノ)


シラーの戯曲「ウイリアム・テル」の冒頭に置かれた三篇の詩は、

観衆を物語の舞台となるスイスに引き込む目的として書かれたもの…。

それぞれの詩の内容は、

最初の「漁師の少年」では、湖で漁をする少年に忍び寄る魔物の誘惑が…

次の「羊飼い」では、山の牧場の夏が終わり、翌年花咲き鳥が歌う頃までのしばしの別れが…

そして3番目の「アルプスの狩人」では、冬の厳しいアルプスで狩をする人々の勇壮さが読まれています…。

これら三篇の詩に付けられたリストの曲、とりわけピアノ伴奏は、

巧みな情景描写と旋律の美しさに富んだ、魅力の大きなものです。

F.ディースカウのバリトンと、バレンボイムのピアノ伴奏で…。


第1曲「漁師の少年」では、

爽やかな大気のたたずまいと、陽光を浴びて輝く湖面の美しさを思わせるピアノ伴奏と、

魔物に魅入られて腑抜けにされ、美に酔いしれたように歌う若者を髣髴されるようなディースカウの歌唱が、印象的です!


第2曲「羊飼い」では、

ピアノ伴奏が、風に揺れる草花が別れを告げているような、メルヘンチックな感傷を醸すなか、

牧場へのしばしの別れを歌う、素朴な美しい旋律!

最後に強打されるピアノは、厳しい冬の兆しを表現しているのでしょうか。


第3曲「アルプスの狩人」では、

厳冬期のアルプス山中を思わせる、ピアノの強打による激しいリズムと、

それとせめぎ合うように、満々たる志を湛えた力強い狩人の歌…。


昨晩も寝苦しかった避暑地軽井沢でしたが、今日も暑くなりそう…。

スイスをテーマにした詩に付曲されたこの3曲、

意外に思われるかもしれませんが、こんな暑い日にぴったりでした。

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