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ドヴォルザーク:
弦楽四重奏曲第14番変イ長調 op.105   

シュターミッツ弦楽四重奏団 


1892〜95年、ニューヨークのナショナル音楽院院長としてアメリカに滞在したドヴォルザークが、

任を終えて帰国直前に作曲に取り掛かり、帰国した年の12月に完成させた作品。

帰国後に着想され、書き進められたと言われるop.106が、第13番と若い番号になっているのは、

こちらの方が早く完成したためです…。


アメリカ滞在中に、黒人霊歌や先住民の歌に触発され、

「新世界交響曲」「チェロ協奏曲」「弦楽四重奏曲第12番」など、今も人気の高い代表作を書き上げたドヴォルザークでしたが、

帰国直前に着想された弦楽四重奏曲第14番からは、

望郷の念強く、「心ここに在らず…」の心境だったのか、

祖国ボヘミアの香りしか聴き取ることができません…。


【第1楽章:Adagio ma non troppo-allegro appasionate】

チェロのモノローグによって開始されるAdagio部…。

ピチカートに乗って思いを巡らすような趣は、3年間滞在したアメリカへの惜別の念?

それとも、祖国ボヘミアへの募る郷愁でしょうか…。

清らかな思いがこみあげてくるような、主部の旋律!

前述した3曲のような、深く印象に刻まれる旋律こそありませんが、

ドヴォルザークの温厚な人柄が偲ばれる、聴くほどに味わいが深まる曲であり、演奏です!


【第2楽章:Molto vivace】

主部のボヘミア風の舞曲には、熱き情熱と懐かしさを湛えたもの。

穏やかなトリオ部では、各楽器が歌い語り合うように奏され、

懐かしさを偲ぶような趣が…

筆舌に尽くし難い味わいを有した、この曲・この演奏の白眉だと思います!


【第3楽章:Lento e molto cantabile】

夕べの寛いだ雰囲気を湛えて開始される第3楽章は、

次第にこみあげる幸福感、

それを噛みしめる喜び、

そして感謝に満ちた安らぎへと導かれていきます…。

これも又、味わい深い名演です!


【第4楽章:Allegro non tanto】

忘却の彼方から湧き上がるようなチェロのモノローグで開始されますが、

直ぐに晴れやかな気分の舞曲が終楽章を支配します。

そんな中にも秘めやかさが感じられるのは、いかにもドヴォルザークらしいのですが…。

前3楽章が素晴らしい味わいを有するだけに、やや物足りなさを感じてしまうのです。


いずれにしても、味わい深いシュターミッツ四重奏団の演奏!

ドヴォルザーク弦楽四重奏曲全集だからこそ知り得たものですが、

室内楽好きな方には、是非とも一聴されることをお薦めしたい曲であり、演奏です!

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