任を終えて帰国直前に作曲に取り掛かり、帰国した年の12月に完成させた作品。
帰国後に着想され、書き進められたと言われるop.106が、第13番と若い番号になっているのは、
こちらの方が早く完成したためです…。
アメリカ滞在中に、黒人霊歌や先住民の歌に触発され、
「新世界交響曲」「チェロ協奏曲」「弦楽四重奏曲第12番」など、今も人気の高い代表作を書き上げたドヴォルザークでしたが、
帰国直前に着想された弦楽四重奏曲第14番からは、
望郷の念強く、「心ここに在らず…」の心境だったのか、
祖国ボヘミアの香りしか聴き取ることができません…。
【第1楽章:Adagio ma non troppo-allegro appasionate】
チェロのモノローグによって開始されるAdagio部…。
ピチカートに乗って思いを巡らすような趣は、3年間滞在したアメリカへの惜別の念?
それとも、祖国ボヘミアへの募る郷愁でしょうか…。
清らかな思いがこみあげてくるような、主部の旋律!
前述した3曲のような、深く印象に刻まれる旋律こそありませんが、
ドヴォルザークの温厚な人柄が偲ばれる、聴くほどに味わいが深まる曲であり、演奏です!
【第2楽章:Molto vivace】
主部のボヘミア風の舞曲には、熱き情熱と懐かしさを湛えたもの。
穏やかなトリオ部では、各楽器が歌い語り合うように奏され、
懐かしさを偲ぶような趣が…
筆舌に尽くし難い味わいを有した、この曲・この演奏の白眉だと思います!
【第3楽章:Lento e molto cantabile】
夕べの寛いだ雰囲気を湛えて開始される第3楽章は、
次第にこみあげる幸福感、
それを噛みしめる喜び、
そして感謝に満ちた安らぎへと導かれていきます…。
これも又、味わい深い名演です!
【第4楽章:Allegro non tanto】
忘却の彼方から湧き上がるようなチェロのモノローグで開始されますが、
直ぐに晴れやかな気分の舞曲が終楽章を支配します。
そんな中にも秘めやかさが感じられるのは、いかにもドヴォルザークらしいのですが…。
前3楽章が素晴らしい味わいを有するだけに、やや物足りなさを感じてしまうのです。
いずれにしても、味わい深いシュターミッツ四重奏団の演奏!
ドヴォルザーク弦楽四重奏曲全集だからこそ知り得たものですが、
室内楽好きな方には、是非とも一聴されることをお薦めしたい曲であり、演奏です!