ケーテン在住時代の1720年、先妻マリア・バルバラを亡くしたバッハでしたが、
翌年12月に、親交を深めていた地元の音楽家の末娘で、16歳年下の宮廷歌手アンナ・マクダレナと再婚。
彼女はバッハのよき理解者として、豊かな音楽知識を生かして写譜を始め、様々な面で内助の功ぶりを発揮!
この時期に世俗音楽の名作が数多く誕生しているのは、彼女の貢献に由るところが大きかったと言われています。
3曲のヴァイオリン協奏曲(BWV1041〜3)も、その頃の作品の一つ。
今日エントリーする第1番BWV1041を、スタンデージのソロ・ヴァイオリンと、ピノック率いるイングリッシュ・コンサートの演奏を聴くと、
若々しく瑞々しい感性に満たされた、幸福なバッハの心境が伝わってくるようです。
【第1楽章:(Allegro modertate)】
イ短調の作品ですが、春風が繊細に肌を撫でるような、自然の美しい息吹に感動を覚える演奏が展開…。
バロック・ヴァイオリンの名手スタンデイジの音色は、
時に春風のように、
時に鳥たちの囀りのように、
オーケストラに寄り添い、清々しい息吹を吹き込むような名演!
【第2楽章:Andante】
忍び寄る宵闇、穏やかな寛ぎのひととき…。
繊細なヴァイオリンの響きが醸す雰囲気は、
宗教的体験の皆無な若者が、教会の中で突然神の懐に包まれたような、
そんな新鮮な驚きと感動・喜びを表現しているようです。
【第3楽章:Allegro assai】
幸福感に満ち溢れた舞曲風の終楽章…。ヴァイオリンの明るく繊細な響きは、自然界の全てから祝福を受けるような趣…。
バッハのヴァイオリン協奏曲に関して言えば、私はピリオド楽器の方が曲想にマッチしているように思えます。
中でも、今日エントリーした演奏は、たった今曲が誕生したばかりのような瑞々しい感動に溢れたもの!
こういったスタイルの演奏を毛嫌いされる方にも、是非とも聴いていただきたいと思います!