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ベートーヴェン:
弦楽四重奏曲第4番ハ短調 op.18-4   

アルバン・ベルク弦楽四重奏団 


1798〜1800年にかけて、ベートーヴェンは交響曲第1番や、6曲の弦楽四重奏曲に次々と着手、

ハイドン・モーツァルトという偉大な先人への挑戦が試みられました。


その中で弦楽四重奏曲第4番は、初期弦楽四重奏曲(op.18-1〜6)の最期に完成されたと言われており、

6曲中唯一短調で書かれていること、

そして「運命交響曲」と同じハ短調の調性であることで、一層興味を惹くことになったようです…。


エントリーする演奏は、アルバン・ベルク四重奏団による1981年録音のもの。

【第1楽章:Allegro ma non tanto】

このディスクで、仄暗く不安定な感情を湛えた第1主題を聴くと、モーツァルトのピアノ協奏曲第20番の冒頭を想い起こしますが…。

そんな感情をきっぱりと絶ち切るかのように、力強く刻まれる弦…。

そして、美しく伸びやかに歌われる第2主題。

葛藤を繰り返しながら展開していくさまは、

既に先人の書いた弦楽四重奏を超えて、中期作品を髣髴される深い内面が表現されているよう…。


【第2楽章:Scherzo、Andante quasi Allegro】

スケルツォと表示されながらも、アンダンテの速度で、かつソナタ形式をとった特異なこの楽章は、

自問自答しつつ、苦悩を克己しようとする複雑な内面を、フーガの形に託して表現したように感じられます…。


【第3楽章:Menuetto、Allegretto】

光明が見えてきそうで、なかなか仄暗さから脱しきれない、スケルツォ風のメヌエット…。

トリオ部では、落ち着いた安らぎが語られます!


【第4楽章:Allegro】

パッションを湛えつつ、高貴な舞曲風の第1主題と、

対照的に、ヴィオラが歌う伸びやかな安らぎに満ちた第2主題が、入り混じりながらロンド風の展開をみせる終楽章。

仮にこの時期、耳疾患に悩み始めていたとしても、治癒する希望を抱いていたかのように、

伸びやかで美しい青春の歌に満ち溢れた終楽章であり、喜悦感に溢れた演奏が展開されていきます…。


偉大なる先人モーツァルトの影響、そしてそれを超えようとするベートーヴェンの姿が垣間見える、大変に魅力的な作品です!

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