ハイドン・モーツァルトという偉大な先人への挑戦が試みられました。
その中で弦楽四重奏曲第4番は、初期弦楽四重奏曲(op.18-1〜6)の最期に完成されたと言われており、
6曲中唯一短調で書かれていること、
そして「運命交響曲」と同じハ短調の調性であることで、一層興味を惹くことになったようです…。
エントリーする演奏は、アルバン・ベルク四重奏団による1981年録音のもの。
【第1楽章:Allegro ma non tanto】
このディスクで、仄暗く不安定な感情を湛えた第1主題を聴くと、モーツァルトのピアノ協奏曲第20番の冒頭を想い起こしますが…。
そんな感情をきっぱりと絶ち切るかのように、力強く刻まれる弦…。
そして、美しく伸びやかに歌われる第2主題。
葛藤を繰り返しながら展開していくさまは、
既に先人の書いた弦楽四重奏を超えて、中期作品を髣髴される深い内面が表現されているよう…。
【第2楽章:Scherzo、Andante quasi Allegro】
スケルツォと表示されながらも、アンダンテの速度で、かつソナタ形式をとった特異なこの楽章は、
自問自答しつつ、苦悩を克己しようとする複雑な内面を、フーガの形に託して表現したように感じられます…。
【第3楽章:Menuetto、Allegretto】
光明が見えてきそうで、なかなか仄暗さから脱しきれない、スケルツォ風のメヌエット…。
トリオ部では、落ち着いた安らぎが語られます!
【第4楽章:Allegro】
パッションを湛えつつ、高貴な舞曲風の第1主題と、
対照的に、ヴィオラが歌う伸びやかな安らぎに満ちた第2主題が、入り混じりながらロンド風の展開をみせる終楽章。
仮にこの時期、耳疾患に悩み始めていたとしても、治癒する希望を抱いていたかのように、
伸びやかで美しい青春の歌に満ち溢れた終楽章であり、喜悦感に溢れた演奏が展開されていきます…。
偉大なる先人モーツァルトの影響、そしてそれを超えようとするベートーヴェンの姿が垣間見える、大変に魅力的な作品です!