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G.フォーレ:レクイエム op.48

ガエル・ル・ロワ(ソプラノ)  フランソワ・ル・ルー(バリトン)
国立リヨン管弦楽団合唱団
エマニュエル・クリヴィヌ指揮  国立リヨン管弦楽団


1885年に父を、その3年後に母を相次いで亡くしたフォーレの作品には、

初期の変化に富んだハーモニーと、甘美で夢見るような旋律に加え、

瞑想と悲しみの表現が見られるようになったと言われています。

フォーレの代表作であるばかりでなく、古今のレクイエムの傑作と評されるこの作品は、そんな時期に書き上げられたもの。

後年、「死とは、苦しみというより、永遠の至福の安らぎに満ちた解放感」との死生観を語ったフォーレ!

それは、同時に亡き人の魂が、永遠に安らかに存続して欲しいとの願いであるように思えます。


今日聴いたクリヴィヌ/国立リヨン管弦楽団の演奏は、

時を経ることによって昇華された悲しみが、宗教的な法悦を超越して、

時に神秘的な、時に麗しい官能の世界へと誘ってくれる、そんな解釈と感じられるのです。


【第1曲:入祭唱とキリエ】

冒頭、合唱のグレゴリオ聖歌のような響きに惹き込まれたこの演奏!

オルガンの静謐な響きと、

紗のヴェールに包まれた遥かな古の彼方から響いてくる、柔らかな合唱が印象的。


【第2曲:奉献唱】

立ち込めた霧の彼方から聞こえてくる、神秘的な声楽の響き。

後半部の長調への転調では、霧が薄らぎ陽が射しこむように、

静謐さに覆われた中に、感動的な瞬間が訪れます!


【第3曲:サンクトゥス】

憧れに満ちた世にも美しい響きが、たなびくように流れ、空間へと拡がっていく…

神品とも言える作品です!


【第4曲:ピエ・イエズ】

このレクイエムの中でも、ひときわ輝く存在!

清純でありながら、官能を柔らかく刺激するような、ル・ロワの珠玉のような歌唱は、絶品!

世俗的でありながら、心に浸み入るような素晴らしい演奏です!


【第5曲:アニュス・デイ】

テノールと弦楽器が絡み合うように奏でるさまは、天国の花園を逍遙する趣が…。

聖なる儀式を思わせるように鳴り響く金管の音色が、印象的!


【第6曲:リベラ・メ】

切々と訴えかけるようなバリトン独唱による祈りと、天啓を思わせるように鳴り響く、ラッパの音色。

含蓄の深さが感じられる音楽です!


【第7曲:天国にて】

浮遊感を湛えたオルガンのアルペジオは、天使が飛び回るような清純さ…。

永遠の安らぎを願う音楽なのでしょう!


敬虔さとは一線を画したこの演奏!

蒸し暑い一日でしたが、静謐で爽やかな感動を与えてくれた、素晴らしいものでした。

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