初期の変化に富んだハーモニーと、甘美で夢見るような旋律に加え、
瞑想と悲しみの表現が見られるようになったと言われています。
フォーレの代表作であるばかりでなく、古今のレクイエムの傑作と評されるこの作品は、そんな時期に書き上げられたもの。
後年、「死とは、苦しみというより、永遠の至福の安らぎに満ちた解放感」との死生観を語ったフォーレ!
それは、同時に亡き人の魂が、永遠に安らかに存続して欲しいとの願いであるように思えます。
今日聴いたクリヴィヌ/国立リヨン管弦楽団の演奏は、
時を経ることによって昇華された悲しみが、宗教的な法悦を超越して、
時に神秘的な、時に麗しい官能の世界へと誘ってくれる、そんな解釈と感じられるのです。
【第1曲:入祭唱とキリエ】
冒頭、合唱のグレゴリオ聖歌のような響きに惹き込まれたこの演奏!
オルガンの静謐な響きと、
紗のヴェールに包まれた遥かな古の彼方から響いてくる、柔らかな合唱が印象的。
【第2曲:奉献唱】
立ち込めた霧の彼方から聞こえてくる、神秘的な声楽の響き。
後半部の長調への転調では、霧が薄らぎ陽が射しこむように、
静謐さに覆われた中に、感動的な瞬間が訪れます!
【第3曲:サンクトゥス】
憧れに満ちた世にも美しい響きが、たなびくように流れ、空間へと拡がっていく…
神品とも言える作品です!
【第4曲:ピエ・イエズ】
このレクイエムの中でも、ひときわ輝く存在!
清純でありながら、官能を柔らかく刺激するような、ル・ロワの珠玉のような歌唱は、絶品!
世俗的でありながら、心に浸み入るような素晴らしい演奏です!
【第5曲:アニュス・デイ】
テノールと弦楽器が絡み合うように奏でるさまは、天国の花園を逍遙する趣が…。
聖なる儀式を思わせるように鳴り響く金管の音色が、印象的!
【第6曲:リベラ・メ】
切々と訴えかけるようなバリトン独唱による祈りと、天啓を思わせるように鳴り響く、ラッパの音色。
含蓄の深さが感じられる音楽です!
【第7曲:天国にて】
浮遊感を湛えたオルガンのアルペジオは、天使が飛び回るような清純さ…。
永遠の安らぎを願う音楽なのでしょう!
敬虔さとは一線を画したこの演奏!
蒸し暑い一日でしたが、静謐で爽やかな感動を与えてくれた、素晴らしいものでした。