自作の交響曲第1番がメンデルスゾーンに認められてライプツィヒで初演されたことが縁で、
彼の在命中は当地の音楽院で教鞭をとり、ゲヴァントハウス管の副指揮者も勤めていました。
作曲家としての彼は、早熟の天才として語られることが多く、
op.1の序曲「オシアンの余韻」(1840)や交響曲第1番(1842)など、初期の作品の評価は高いものの、
その後、これら作品以上のものを創造することができなかったと言われています…。
今日エントリーする「ハムレット」は、申すまでもなくシェークスピアの戯曲を題材にしたもの。
1861年に所縁のライプツィヒで初演されましたが、
当時のドイツの評論家は、「方々で100回以上は聴いたことのある、要するに芸術としての進歩がない、お粗末な模造品…」などと、惨憺たる評価を下したとか…。
プロローグは、亡き王の亡霊が、我が子ハムレットに会って自らの死の真実を語るべく、城内をさまよう不気味な音楽。
まがまがしい出来事の真実をハムレットに語りかけるように強奏されるチューバの響きは、怒りと怨念が込められた大変に印象的なもの!
主部は、恋人オフィーリアへの純粋な愛を思わせる、清らかで美しい音楽で開始されます。
金管の雄叫びは、
狂気を装うために、心ならずもオフィーリアを無下に扱ったり、
誤ってオフィーリアの父親を刺殺したり等々…
そんなハムレットの苦悶が表現されているのですが…。
ただ、決して重苦しくはならず、
むしろ、初々しく覇気のある音楽には、若者のリリカルな感性が滲み出ていて、
それがいかにも北欧的な情緒を湛えていて、私には耳新しく好ましい音楽と聴こえるのです。
エピローグでは、再び王の亡霊がさまよい、曲は静かに終わります…。
メンデルスゾーンに私淑したと言われるゲーゼの音楽には、
恩人の持つロマンの香りに加えて、北欧的な爽やかな風が吹くような、そんな音楽と感じました。