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フランツ・フォン・スッペ:喜歌劇「美しきガラテア」序曲

ローリン・マゼール指揮  ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団


スッペの喜歌劇「美しいガラテア」の“ガラテア”とは、ギリシャ神話に登場する女性で、「乳白色の肌をもつ者」の意味!

現実の女性に失望したある彫刻家が、自らが象牙に彫った愛と美と性を司る理想の女神像「ガラテア」に真剣に恋をし、次第にやつれていきます…。

しかし、いつしか思いが通じて彫像は生命を吹き込まれて人間となり、彫刻家は理想の女性を花嫁として娶ることが出来た…

そんなギリシャ神話が、物語の礎となっています…。


ところが、スッペの喜歌劇の粗筋では…

人間に身を変えた「ガラテア」の実態は、

若い召使いに惚れこんだり、

美術収集家に宝石をねだったりと、奔放の限りを尽くす女!

嫉妬した彫刻家は、元の彫像に戻るようにと願うと、

宝石を身に付けたままで元の姿に戻ってしまった…

そんな他愛ないお話に仕上がっています。

全曲は未聴ですが、

明るくって、雅で、「ガラテア」の得意満面な表情が生き生きとユーモラスに表現された、

マゼールの指揮する2005年ウィーンフィル・ニューイヤーコンサートでの演奏をエントリーします。


リズミカルかつ豪華絢爛に開始される冒頭部が収束すると、

静寂の中からホルンが呼びかけ、これに応える木管の響きが神秘的な雰囲気を漂わせ、

生きとし生けるものに祝福されて一つの美しい生命が誕生する、

まるで、ボッティチェッリの絵画「ヴィーナス誕生」を見るような趣を有した音楽。


一転して、ピッツィカートのリズムに乗って木管が奏する愛らしく活発な旋律は、

若い娘「ガラテア」の、コケティシュな仕草・振る舞いなのでしょうか。

曲は気持よいほど快楽的に盛り上がり、得意満面、曲は頂点を極め、落ち着くと…。


続くワルツは、瀟洒で優雅なのですが、それとは相容れぬ気取った得意げな表情が垣間見えるユーモアを湛えています…。

スッペのみが書き得た、喜歌劇音楽の真骨頂!

魅惑的な「ガラテア」は、あちらこちらへと活発に踊りまわりながら、次第に興は高まっていきます。

もう一度、ワルツが自信満々に回帰!

何とも言えないユーモアを湛えつつ、劇への期待感を高めつつ序曲は終わります!


喜歌劇の粗筋を知っていると、正直「これだけ楽しませてもらえば、これ以上何も要らない!」

そう思える、実に愉しい演奏です。

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