現実の女性に失望したある彫刻家が、自らが象牙に彫った愛と美と性を司る理想の女神像「ガラテア」に真剣に恋をし、次第にやつれていきます…。
しかし、いつしか思いが通じて彫像は生命を吹き込まれて人間となり、彫刻家は理想の女性を花嫁として娶ることが出来た…
そんなギリシャ神話が、物語の礎となっています…。
ところが、スッペの喜歌劇の粗筋では…
人間に身を変えた「ガラテア」の実態は、
若い召使いに惚れこんだり、
美術収集家に宝石をねだったりと、奔放の限りを尽くす女!
嫉妬した彫刻家は、元の彫像に戻るようにと願うと、
宝石を身に付けたままで元の姿に戻ってしまった…
そんな他愛ないお話に仕上がっています。
全曲は未聴ですが、
明るくって、雅で、「ガラテア」の得意満面な表情が生き生きとユーモラスに表現された、
マゼールの指揮する2005年ウィーンフィル・ニューイヤーコンサートでの演奏をエントリーします。
リズミカルかつ豪華絢爛に開始される冒頭部が収束すると、
静寂の中からホルンが呼びかけ、これに応える木管の響きが神秘的な雰囲気を漂わせ、
生きとし生けるものに祝福されて一つの美しい生命が誕生する、
まるで、ボッティチェッリの絵画「ヴィーナス誕生」を見るような趣を有した音楽。
一転して、ピッツィカートのリズムに乗って木管が奏する愛らしく活発な旋律は、
若い娘「ガラテア」の、コケティシュな仕草・振る舞いなのでしょうか。
曲は気持よいほど快楽的に盛り上がり、得意満面、曲は頂点を極め、落ち着くと…。
続くワルツは、瀟洒で優雅なのですが、それとは相容れぬ気取った得意げな表情が垣間見えるユーモアを湛えています…。
スッペのみが書き得た、喜歌劇音楽の真骨頂!
魅惑的な「ガラテア」は、あちらこちらへと活発に踊りまわりながら、次第に興は高まっていきます。
もう一度、ワルツが自信満々に回帰!
何とも言えないユーモアを湛えつつ、劇への期待感を高めつつ序曲は終わります!
喜歌劇の粗筋を知っていると、正直「これだけ楽しませてもらえば、これ以上何も要らない!」
そう思える、実に愉しい演奏です。