作曲者本人は、曲の出来に不満足だったらしく、初演後にスコアを破棄したとか!
しかし、初演時に使われたパート譜が残されていて、それを基にチャイコフスキーの死後に総譜が復元されたお蔭で、今日この曲を聴くことが出来るのですが…。
詩の内容は、戦場から帰還した地方長官が、自宅の庭で嘗ての恋人と密会する妻を目撃。
召使に二人を射殺するように命ずるが、銃弾は長官の額をぶち抜く…。
所有CDのライナーやwikipediaを読んでも、この程度の内容しか分からないのです…。
三部形式のこの曲は、
前・後半部では、激しい抗争を思わせるリズム展開や、呪いの言葉を思わせるバスーンの響きが、
長官の鬱々とした感情や憤怒の形相を髣髴させます。
中間部では、「胡桃割り人形」に先立って使われたチェレスタの純で甘美な響きが、恋人たちの清らかな愛を効果的に描きますし、
チャイコフスキー特有の甘美な旋律には、死をも顧みない潔さが込められていて、強く心に訴えかけてきます。
正直申し上げて、曲の繋がりやバランスに今一つ物足りなさを感じますが、
それでも、中間部のチャイコフスキーが書いた最高に美しい旋律を、
アバド/シカゴ饗は、真摯に美しく表現していると感じました!
滅多に聴かれることのない作品ですが、ご存知ない方はぜひ御一聴下さい!