オスロ近郊の美しく蛇行した渓谷の一つ、ハリダールに伝わる民族バラードを主題に採り、
それに基づく14の変奏から構成された作品。
「ノルウェーの民謡の鉱脈を掘り下げ、そこに国民的な芸術を生み出そう」と意図したグリーグですが、
この作品は変奏曲という形を採って、ノルウェーの自然や風土、そこに住む人々の一日の姿を描いたようで、
さながらスライドショーのような趣を感じます!
演奏は、力強い活力の中にも北欧の抒情が清々しくメルヘンチックに表現された、ネーメ・ヤルヴィとエーテボリ響によるものです。
闇から次第に薄明りが射しこむように開始され、
すぐに劇付随音楽「ペールギュント」で聴いたことがあるような爽やかな主題が提示されると、
聴き手は、瞬時にノルウェーの風土へと誘われます!
変奏は、鳥たちの目覚めに始まり、
人々の目覚めと忙しげな、しかし活き活きと楽しそうな日常生活、
どこまでも澄みきった、爽やかな朝の大気、
勇壮なホルンの響きに導かれた狩の様子、
鳥たちの囀りと、愉しげな民族舞曲、
訪れるメランコリーな感傷…、
夜の帳が下りはじめる、穏やかな黄昏時の情景…、
妖精が飛び回る夜の森の中に訪れる、穏やかなメルヘンの世界…。
お伽の国の王様が、威丈高に踊るぎこちないワルツ…。
終曲は、ノルウェーの波乱万丈の歴史を振り返るように、
誇り高き王国の凱歌、激しい戦闘模様、そして全てが灰燼に帰し、
そして穏やかな平和の訪れが語られていきます…!
元々はピアノ連弾用に書かれたそうですが、グリーグ自身が管弦楽曲用に編曲したもの。
「ノルウェー讃歌」とでも名付けられそうな、佳曲だと思います。