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ベンジャミン・ブリテン:
フランク・ブリッジの主題による変奏曲

ネヴィル・マリナー指揮  アカデミー室内管弦楽団 


1937年、ブリテン24歳時にかかれた出世作とも言われる作品。

12歳の少年だったブリテンの才能を見込んで、楽理から作曲に至るまで無償で教えてくれた恩人フランク・ブリッジの「(弦楽四重奏のための)3つの田園詩曲」から、

第2曲の主題をテーマにした変奏曲です。


(序奏と主題)

ピチカートで奏される序奏の苛立たしく物々しい幕開けは、錯綜した心の表現でしょうか。

続いて提示される、寂寥としたワルツ風の主題は、存在感の希薄さを感じるのです!


(第1変奏:アダージョ)

主題提示から、慟哭するように第1変奏に入っていきますが、次第に落ち着いていきます。


(第2変奏:マーチ)

行方の定まらない頼りなげな楽想のために、どこかシニカルな印象が…。


(第3変奏:ロマンス)

サロン的な明るい雰囲気を持った、優雅なワルツのリズムが…。


(第4変奏:イタリア風アリア)

ロッシーニを思わせるような、晴れやかで颯爽とした疾走感が味わえます!


(第5変奏:古風なブーレ)

力強く活気のある舞曲の中、独奏ヴァイオリンが孤軍奮闘するような趣が…。


(第6変奏:ウィンナワルツ)

ラヴェルの「ラ・ヴァルス」を思わせるワルツ。
中間部の滑らかな雅さは、淑女のドレスの衣擦れを髣髴します。


(第7変奏:常動曲)

高音から低音のユニゾンへと移りゆく変化は、一気に奈落の底へと落ちて行くような…。


(第8変奏:葬送行進曲)

深い悲しみに遭い、錯綜し、行き場のない苦渋が込められた、激烈な葬送行進曲!


(第9変奏:歌)

高弦のピチカートの伴奏による、祈りのようなヴィオラの響き!声にならない悲しみの歌…。


(第10変奏:フーガとフィナーレ)

慌ただしく、錯綜としたフーガで始まり、

悲嘆を突き抜けて至った、清明な心境を思わせるフィナーレ!


当時の不穏な世界情勢の中で、自身が抱いたのであろう錯綜した心境を、

恩師ブリッジの作品を基にして、変奏曲として書き上げられた作品ではないでしょうか。

ブリテンの心を読み切った、奥深い内容を伴なうマリナーの演奏だと感じました。

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