12歳の少年だったブリテンの才能を見込んで、楽理から作曲に至るまで無償で教えてくれた恩人フランク・ブリッジの「(弦楽四重奏のための)3つの田園詩曲」から、
第2曲の主題をテーマにした変奏曲です。
(序奏と主題)
ピチカートで奏される序奏の苛立たしく物々しい幕開けは、錯綜した心の表現でしょうか。
続いて提示される、寂寥としたワルツ風の主題は、存在感の希薄さを感じるのです!
(第1変奏:アダージョ)
主題提示から、慟哭するように第1変奏に入っていきますが、次第に落ち着いていきます。
(第2変奏:マーチ)
行方の定まらない頼りなげな楽想のために、どこかシニカルな印象が…。
(第3変奏:ロマンス)
サロン的な明るい雰囲気を持った、優雅なワルツのリズムが…。
(第4変奏:イタリア風アリア)
ロッシーニを思わせるような、晴れやかで颯爽とした疾走感が味わえます!
(第5変奏:古風なブーレ)
力強く活気のある舞曲の中、独奏ヴァイオリンが孤軍奮闘するような趣が…。
(第6変奏:ウィンナワルツ)
ラヴェルの「ラ・ヴァルス」を思わせるワルツ。
中間部の滑らかな雅さは、淑女のドレスの衣擦れを髣髴します。
(第7変奏:常動曲)
高音から低音のユニゾンへと移りゆく変化は、一気に奈落の底へと落ちて行くような…。
(第8変奏:葬送行進曲)
深い悲しみに遭い、錯綜し、行き場のない苦渋が込められた、激烈な葬送行進曲!
(第9変奏:歌)
高弦のピチカートの伴奏による、祈りのようなヴィオラの響き!声にならない悲しみの歌…。
(第10変奏:フーガとフィナーレ)
慌ただしく、錯綜としたフーガで始まり、
悲嘆を突き抜けて至った、清明な心境を思わせるフィナーレ!
当時の不穏な世界情勢の中で、自身が抱いたのであろう錯綜した心境を、
恩師ブリッジの作品を基にして、変奏曲として書き上げられた作品ではないでしょうか。
ブリテンの心を読み切った、奥深い内容を伴なうマリナーの演奏だと感じました。