最近聴いたCD

ドヴォルザーク:ピアノ三重奏曲第3番 ヘ短調

フ ロ レ ス タ ン ・ ト リ オ


1882年12月14日に母 (享年64歳) を亡くしたドヴォルザークが、直後の翌年の2月初めから3月にかけて作曲、

しかし同年10月に初演されるまでには、珍しく何度も手を加えられと言われるピアノ三重奏曲第3番ヘ短調…。

亡き母への追悼の念が込められているのであろうこの曲から、ドヴォルザークの他の作品と同様にボヘミア的なリズムやハーモニーを聴き取ることは勿論できますが、

それ以上に、当時親交を深めていたブラーム的な性格=分厚く内向的な響きが、随所に感じられるのです。


今日エントリーするイギリスのフロレスタン・トリオによるアンサンブルの素晴らしさは、特筆もの!

ボヘミア的な民族色はやや希薄なのですが、ブラームスの作品かと思うばかりに内省的な分厚い響きの中から、これまで聴いたどの演奏よりも悲しみや愉しかった日々が蘇ってくるように感じられます。


【第1楽章:Allegro ma non troppo】

ブラームスを思わせるような分厚い響きの中に、ロマンに満ちた深い憂愁が聴きとれる、格調の高い見事な演奏!

他の演奏で感じていたボヘミア的な色合いは皆無ですが、そんな郷土色を超越した奥深さを有すると感じます!


【第2楽章:Allegro grazioso;meno mosso】

冒頭、弦が細かくリズムを刻む中、ピアノが奏でる印象的な旋律は、楽しかった日々を懐かしむ趣を有したもの!

明確な形を有さずに、ただ美しく流れて消え去っていくような中間部には、命の儚さが漂います…。


【第3楽章:Poco adagio】

晩鐘を思わせるようなピアノの音色が静かに響く中、虚しく悲しくチェロの旋律で開始される第3楽章。

古を辿りつつ、蘇る美しい想い出に感極まっていく…。

静謐さの中に深いノスタルジーとメランコリーに溢れた、ドヴォルザークの全作品中でも屈指の名曲だと思います!


【第4楽章:Allegro con brio】

力強く、喜悦感に溢れたボヘミアの民族舞曲フリアントを思わせる第1主題と、哀愁に満ちて美しい第2主題との対比が素晴らしい終楽章。

この演奏で唯一残念に思うのが、第1主題のの民族性が希薄なために、第2主題が引き立たないように感じること。

しかし、最後はボヘミアの草原の落日を思わせるように、ノスタルジーを漂わせつつ、曲は終わります。


フロレスタン・トリオの演奏で、初めてこの曲の奥深さを知った次第…。

機会がありましたら、ご一聴下さい!

ホームページへ