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ヴィルヘルム・ステンハンマル:セレナード

エサ=ペッカ・サロネン指揮  スウェーデン放送交響楽団 


スウェーデンの作曲家であり、エーテボリ交響楽団の初代指揮者だったステンハンマル(1871-1927)が、

1907年に滞在したイタリア・フィレンツェでの想い出を、北欧人の感性で表現した作品とされています。

サロネン指揮するスェーデン放送交響楽団の演奏で初めて聴いたこの曲ですが、

例えて言えば、高級な蒸留酒を薄い水割りにして口に含んだ時のように、

複雑な味わいや刺戟とは全く無縁な、ピュアで芳醇なモルトの味わいがいつまでも深く残る、

そんな清々しい印象を受けた曲であり、演奏でした。


【第1曲:序曲】

爽やかな風とともに心地好い憂愁が吹き抜けるような、瑞々しい感慨を覚える冒頭部!

ヒバリの囀りを思わせるヴァイオリンのソロが、パストラールな雰囲気を際立たせます。

中間部では、仄かな哀愁を漂わせた北欧的な旋律が黄昏時を髣髴させ、懐かしさが蘇るよう!


【第2曲:カンツォネッタ】

舟歌を思わせる心地良い弦の揺らぎと、哀愁漂うクラリネットの美しい旋律。

水面にきらめく月明りのような、ヴァイオリンのソロ!

夜空にまたたくオーロラを思わせる静謐な美しさを漂わせて、曲は終わります…。


【第3曲:スケルツォ】

スケルツォ部は、躍動感溢れる人々を表現しているのでしょうか。

中間部は、まどろみから美しい夢の世界へと移ろいゆく趣が…。

弦が透明な響きで奏でるる、エレジー風の旋律が印象的!


【第4曲:夜想曲】

爽やかなロマンチシズムに溢れた、美しい楽章!

満天に瞬く星たちやナイチンゲールの囀り…。

ニュアンス豊かな木管や、透明な弦の響きがインスピレーションを掻き立て、夢のようなひとときが過ぎていきます。


【第5曲:終曲】

ホルンの牧歌的な響きで開始される、嬉々とした穏やかな喜びに溢れた終曲。


グリーグやシベリウスのような民族主義的な志向とは意を異にして、

透明で飾り気のない音楽を意図した作曲家だとか…。

私たちがイメージするイタリアとは趣を異にしますが、ステンハンマル流の爽やかで瑞々しいロマンに浸れた音楽。

他にはなかなか体験できない、清涼感に溢れた音楽ですので、是非ご体験下さい!

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