1907年に滞在したイタリア・フィレンツェでの想い出を、北欧人の感性で表現した作品とされています。
サロネン指揮するスェーデン放送交響楽団の演奏で初めて聴いたこの曲ですが、
例えて言えば、高級な蒸留酒を薄い水割りにして口に含んだ時のように、
複雑な味わいや刺戟とは全く無縁な、ピュアで芳醇なモルトの味わいがいつまでも深く残る、
そんな清々しい印象を受けた曲であり、演奏でした。
【第1曲:序曲】
爽やかな風とともに心地好い憂愁が吹き抜けるような、瑞々しい感慨を覚える冒頭部!
ヒバリの囀りを思わせるヴァイオリンのソロが、パストラールな雰囲気を際立たせます。
中間部では、仄かな哀愁を漂わせた北欧的な旋律が黄昏時を髣髴させ、懐かしさが蘇るよう!
【第2曲:カンツォネッタ】
舟歌を思わせる心地良い弦の揺らぎと、哀愁漂うクラリネットの美しい旋律。
水面にきらめく月明りのような、ヴァイオリンのソロ!
夜空にまたたくオーロラを思わせる静謐な美しさを漂わせて、曲は終わります…。
【第3曲:スケルツォ】
スケルツォ部は、躍動感溢れる人々を表現しているのでしょうか。
中間部は、まどろみから美しい夢の世界へと移ろいゆく趣が…。
弦が透明な響きで奏でるる、エレジー風の旋律が印象的!
【第4曲:夜想曲】
爽やかなロマンチシズムに溢れた、美しい楽章!
満天に瞬く星たちやナイチンゲールの囀り…。
ニュアンス豊かな木管や、透明な弦の響きがインスピレーションを掻き立て、夢のようなひとときが過ぎていきます。
【第5曲:終曲】
ホルンの牧歌的な響きで開始される、嬉々とした穏やかな喜びに溢れた終曲。
グリーグやシベリウスのような民族主義的な志向とは意を異にして、
透明で飾り気のない音楽を意図した作曲家だとか…。
私たちがイメージするイタリアとは趣を異にしますが、ステンハンマル流の爽やかで瑞々しいロマンに浸れた音楽。
他にはなかなか体験できない、清涼感に溢れた音楽ですので、是非ご体験下さい!