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ブラームス:
ピアノソナタ第2番ヘ短調 op.2

アナトール・ウゴルスキー(ピアノ)


ピアノソナタ第2番は、ブラームス19歳の1852年に既に書き上がられていましたが、

恩師シューマンの妻であるクララに献呈するために、1854年に改訂を加えたために、

1853年に完成・初演されたピアノソナタの方が第1番とされました。

この作品には先輩作曲家、特にベートーヴェンの後期ソナタから聴き取れる理念上の概念に、

ブラームス特有のロマン的な抒情性が加わるためでしょうか、

ややもすると一貫性に欠けて、難渋な印象を受ける演奏が多いのですが…。

今日エントリーするウゴルスキーの演奏は、ロマン的な情緒に軸足を置いた解釈ゆえか、若者の瑞々しい感性が横溢した、深いロマンを感じさせる演奏に仕上がっています。


【第1楽章:Allegro non troppo、ma energico】

燃えたぎる、しかし翳を伴なった情熱を湛えて開始され、

大きな振幅を繰り返しつつ、解決が付かないままに終わる第1楽章。

若者の感情のうねりを、濃厚に表出したウゴルスキーの演奏は、見事の一言に尽きると思います!


【第2楽章:Andante con espressione】

命脈を絶つかのように、神秘に包まれて弱々しく開始される主題が、

次第に愛らしく、きらびやかに開花するような趣を有した変奏曲。

愛おしさを込めたウゴルスキーの解釈は、秀逸!


【第3楽章:Scherzo;Allegro】

切れ目なく、疑問を呈するようなスケルツォ主題で開始され、

歓びを感じつつも逡巡する心の乱れを表わした、繊細で美しい中間部へと入りますが、

ついには志を固めたかのように、力強く終わります。


【第4楽章:Introduzione(Sostenute)-Allegro non troppo e rubato】

孤独さを際立させるように重々しく響く導入部は、さながら夕べの鐘の音のよう…。

この主題が軸となって展開されていく終楽章は、

抑え難い情熱、愛おしさ、喜悦など、

感情の起伏を鐘の音に託したような趣が…。

穏やかに晩鐘の響く中、曲を閉じます!


「ブラームスのピアノソナタは難渋で、今一つ好きになれない」という方にも、是非お薦めしたいディスクです。

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