交響曲第4番が書かれた1934年は、その前年にナチス政権が誕生。
前作から一転して多用される不協和音は、
自国イギリスに迫りくる時代の危機を感じ取ったヴォーン・ウィリアムズの、不穏な心を反映したものと言われています。
【第1楽章:Allegro】
しばしば炸裂する不協和音は、彼が第1次大戦で体験した、戦場での破壊的な様相を表現しているのでしょうか。
重々しく引き摺るような音楽は、戦場へと向かう兵士の絶望的な心境?…。
諦観を漂わせた静寂のうちに、終了します。
【第2楽章:Andante moderate】
低弦のピチカートによって刻まれる歩みは、さながら焦土と化した地をさまようような趣き…。
金管がレクイエムの如くに鳴り響き、静寂の中に寂寥感が漂います。
【第3楽章:Scherzo、Allegro molto】
ペンタトニック・スケールが使用されているせいか、穏やかな民族に忍び寄る狂気を思わせる不思議なスケルツォ部。
中間部は、英雄的な力強さが…。
彼方から死者の声が聞こえてくるような不気味な静けさが訪れ、休みなく終楽章に突入します!
【第4楽章:Allegro molto】
終楽章冒頭部は、颯爽とした勝利への進軍?
途中「我が祖国」の第5・6楽章に使われた、フス教徒の賛美歌のような旋律の断片が…。
衝撃的な炸裂音が鳴り響き、曲は終了します。
当時、自由主義経済の旗手と目されていたイギリス国民が抱いていた不安、焦燥をテーマに、
最後にはそれを乗り越える、力強さを表現した作品なのでしょうか…。
トムソン/ロンドン響のCDは、一瞬たりとも弛緩することのない厳しい現実の中、時折大らかな国民性が垣間見える、精彩漲る名演を堪能させてくれました!