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ガブリエル・フォーレ:組曲「ドリー」(アンリ・ラボー編)

小澤 征爾 指揮  ボストン交響楽団 


曲名のドリーとは、当時親しくしていた銀行家の幼い娘エレーヌの愛称で、

1893〜97年にかけて、彼女の誕生日を祝って毎年書かれた6曲を、組曲としてまとめたもの。

原曲はピアノ連弾用のものですが、

フォーレ存命中の1906年、フランスの作曲家アンリ・ラボーによって管弦楽版に編曲されています。

今日エントリーするのは、小澤征爾/ボストン響による管弦楽版です。


【第1曲:子守歌】

柔らかなベールに包まれたような儚くも雅な、いかにもフォーレらしい美しい旋律!

愛おしくってたまらない、そんな心情が滲み出た作品です。


【第2曲:Mi-a-ou(ミ・ア・ウ)】

奇妙な副題は、エレーヌが兄のラウルを呼ぶ時の「メッシュ・アウル」の幼児言葉を、出版社が猫の鳴き声と取り違えたとか…。

活発に動き回る愛らしい少女が表現された作品。


【第3曲:ドリーの庭】

庭に咲き乱れる花々の馥郁たる香りを思わせる、これもフォーレらしい美しい曲。

穏やかな眠りへと、誘われていきます。


【第4曲:キティー・ワルツ】

これも出版社の取り違えで、本来は兄ラウルの愛犬ケティを意味するとか…。

穏やかに流れるようなワルツは、着飾ったおしゃまな少女の愛らしい姿を髣髴します。


【第5曲:優しさ】

しみじみとした幸福感に浸る、憩いのひととき。

中間部のオーボエとホルンの会話は、楽しい語らいを思わせます。


【第6曲:スペインの踊り】

活き活きとしたファンダンゴのリズムや旋律に、

なぜか懐かしさを伴なった異国情緒を感じてしまうのは、小澤さんの指揮故でしょうか。


不安定な浮遊感に、得も言われぬ美しさが漂ったこの作品は、

単なるサロン音楽の領域を越えて、

現実を超越し、さらなる高みに達し得たものの一つだと思います。

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