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メンデルスゾーン:弦楽八重奏曲 変ホ長調 op.20

A.トスカニーニ指揮  NBC交響楽団 


1825年、メンデルスゾーンが若干16歳の時に作曲したヴァイオリン×4、ヴィオラ×2、チェロ×2のための室内楽曲。

この曲の第3楽章のスケルツォ(弦楽合奏版)が、高校時代に愛聴していたLP(交響曲第3番「スコットランド」)の余白に入っていたのですが、

当時の私には、せかせかした、聴き心地の悪い曲に感じられてしまって…。

「坊主憎けりゃ…」ではありませんが、そのイメージが全楽章に蔓延してしまい、

それを払拭する演奏に出遭えないままに、今日に至っていました。


昨日、トスカニーニ指揮するNBC交響楽団のメンバーによる演奏を聴きました。

1947年、ニューヨークの8Hスタジオでの録音で、

予想した通り、デッドで潤いのない響きなのですが…。


【第1楽章:Allegro moderate、ma con fuoco】

矢をつがえて、弦をぎりぎりまで引き絞ったような、一糸乱れぬ鋭い緊張感の中から、

張り裂けるような情熱を湛えた、類稀な美しい旋律が!

精彩に富んだ音の弾み、どこまでも澄み切ったカンタービレ!

半世紀近くにわたってこの曲に抱いていた負のイメージが、一挙に払拭されました。


【第2楽章:Andante】

哀愁を帯びた、瑞々しくも美しい楽章!

張り裂けるような慟哭を微笑ましく感じるのは、若き日の失恋の痛手を想い起こすからでしょうか!


【第3楽章:Scherzo;Allegro leggierissimo】

一糸乱れぬアンサンブルと、精彩に富んだリズム。

妖精が飛び回るような音楽ですが、

「真夏の夜の夢」序曲が書かれたのは、この翌年(1826年)だったのですね…。


【第4楽章:Presto】

この楽章にも、同序曲の下敷きかと思われるリズムや旋律が登場!

青春真っ只中で、晴れやかに終わります。


長年抱いていた負のイメージが、見事に払拭された演奏!

「トスカニーニの演奏は、しばしば曲の真価を上回る!」

昔、彼の解釈を讃えたこんな評論を思い出してしまいました。

尚この演奏では、トスカニーニ自身によって書かれた、チェロパートにコントラバスを重ねた版で演奏されているそうです。

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