この曲の第3楽章のスケルツォ(弦楽合奏版)が、高校時代に愛聴していたLP(交響曲第3番「スコットランド」)の余白に入っていたのですが、
当時の私には、せかせかした、聴き心地の悪い曲に感じられてしまって…。
「坊主憎けりゃ…」ではありませんが、そのイメージが全楽章に蔓延してしまい、
それを払拭する演奏に出遭えないままに、今日に至っていました。
昨日、トスカニーニ指揮するNBC交響楽団のメンバーによる演奏を聴きました。
1947年、ニューヨークの8Hスタジオでの録音で、
予想した通り、デッドで潤いのない響きなのですが…。
【第1楽章:Allegro moderate、ma con fuoco】
矢をつがえて、弦をぎりぎりまで引き絞ったような、一糸乱れぬ鋭い緊張感の中から、
張り裂けるような情熱を湛えた、類稀な美しい旋律が!
精彩に富んだ音の弾み、どこまでも澄み切ったカンタービレ!
半世紀近くにわたってこの曲に抱いていた負のイメージが、一挙に払拭されました。
【第2楽章:Andante】
哀愁を帯びた、瑞々しくも美しい楽章!
張り裂けるような慟哭を微笑ましく感じるのは、若き日の失恋の痛手を想い起こすからでしょうか!
【第3楽章:Scherzo;Allegro leggierissimo】
一糸乱れぬアンサンブルと、精彩に富んだリズム。
妖精が飛び回るような音楽ですが、
「真夏の夜の夢」序曲が書かれたのは、この翌年(1826年)だったのですね…。
【第4楽章:Presto】
この楽章にも、同序曲の下敷きかと思われるリズムや旋律が登場!
青春真っ只中で、晴れやかに終わります。
長年抱いていた負のイメージが、見事に払拭された演奏!
「トスカニーニの演奏は、しばしば曲の真価を上回る!」
昔、彼の解釈を讃えたこんな評論を思い出してしまいました。
尚この演奏では、トスカニーニ自身によって書かれた、チェロパートにコントラバスを重ねた版で演奏されているそうです。