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F.リスト:交響詩「フン族の戦い」

アルバド・ヨー指揮  ブタペスト交響楽団 


音楽外の想念や心象風景を聴き手に喚起させることを意図して、情景やイメージ、気分や雰囲気と言ったものを描写した「標題音楽」は、

ベルリオーズの「幻想交響曲」「イタリアのハロルド」によって確立されましたが、

それを発展させ、特定の文学的或いは絵画的内容をモチーフとして作曲、「交響詩」と名付けたのがリストでした。

彼は全部で13曲の交響詩を書いていますが、

「前奏曲(レ・プレリュード)」を除くと、それほどは親しまれていません…。

しかし、フランスではサン=サーンス、ダンディ、デュカスらが、

ロシアではチャイコフスキー始め、バラキレフ、リャードフらが、

ボヘミアではスメタナやドヴォルザークが、

フィンランドではシベリウスが、

そしてドイツではR.シュトラウスが、今も人気の高い名曲を完成しています。


今日エントリーする交響詩「フン族の戦い」は、

西暦451年にフランス北部のカタラウヌムで、フン族(=異教徒)と西ヨーロッパ諸民族(=キリスト教徒)との争いが勃発しましたが、

それを描いたカウルバッハの同名壁画にインスパイアされ、作曲を思い立ったと言われています…!

この戦いに敗れたフン族の帝国は瓦解し、人々は欧州各地に散り散りになったとか…。


リストの交響詩の中では親しみ易く、「前奏曲」に次いで人気があるといわれる作品…。

冒頭からいきなり風雲急を告げるかのように開始され、激しい戦闘場面を描いた音楽がしばらく続きます。

途中ホルンが奏するコラール風の旋律は、宗教的な戦いを意味するのでしょうか。

しかし、すぐに激しい戦闘によって打ち消されます。


やがて、コラール「十字架に誠実なれ」が高らかに奏されて、キリスト教徒の勝利が行進曲風に表わされると、

雰囲気は一転して穏やかさが漂い始めます。

オルガンの奏するコラールの響きが天空に漂い、平和な時の訪れが…!

宗教心とは縁遠い私ですが、「慈愛」「救済」といった概念に包まれていく瞬間です!

壮大なオーケストラと、静謐なオルガンの響きが交互に奏でられつつ、

高揚感は最高潮に達していきます。


アルバド・ヨー/ブタペスト交響楽団の演奏を聴いていると、

かなり芝居がかった曲だとは認識しつつも、

特に後半部では、その静謐感に惹き込まれ、いつの間にやら高揚感に浸っているのです。

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