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J.S.バッハ:
ヴァイオリン・ソナタ第4番 ハ短調 BWV1017
(ヴァイオリンとチェンバロのための)

A.グリューミオ(Vn)   C.ジャコッテ(Cem)


バッハは、独奏ヴァイオリンが旋律を奏しそれに通奏低音の簡単な伴奏が付くバロック時代の「通奏低音を伴なうヴァイオリン・ソナタ」以外にも、

より多様な音楽表現を求めて、「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ」「ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ」という、三種類のヴァイオリン・ソナタを残しました。

今日は、「ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ」全6曲の中から第4番をエントリーしますが、

これら作品には、チェンバロの右・左手にも声部が与えられており、

通奏低音に乗ってヴァイオリンが歌うというだけの従来の形式とは一線を画したもの。

ベートーヴェン以降、二つの楽器が対等の立場で音楽を展開していく近代的な二重奏へと発展していきますが、

その懸け橋となった、音楽史的にも重要な作品と位置付けられています。


演奏は、A.グリューミオのヴァイオリンとC.ジャコッテのチェンバロによる1978年のもの。

1720年に亡くなった最初の妻マリアへの、哀悼の念が込められた作品と言われています。


【第1楽章:Siciliano:Largo】

後年に書かれた『マタイ受難曲』のアリア「我が神よ、憐れみたまえ」とよく似た、心に沁み入る感動的な音楽!

強い思い入れを込めることなく、早めのテンポで奏されるこの演奏からは、

逝きし者への、純粋な至高の憂いが感じられます。

未聴の方には是非ともお聴き頂きたい、抒情性に溢れた比類なき名演だと思います!


【第2曲:Allegro】

果てしなき天空へと羽ばたくような、力強くも伸びやかなヴァイオリンの音色!

素晴らしいフーガが展開されていきます。


【第3曲:Adagio】

穏やかに、思慮深く歌われるヴァイオリンの音色の美しさ!

控え目に寄り添うようなチェンバロの、愛おしくなるような響きが印象的な楽章です。


【第4曲:Allegro】

自然な流れの中、闊達に動き回るヴァイオリンと、

それに絡みつくようなチェンバロとの仲睦まじい会話。


朝9時頃から降り始めた雪が、正午前の今、はや20cmほど積もっています。

気持が鬱陶しくなるような日ですが、

ヒューマンな温かさに包まれたグリューミオの演奏は、極上の癒しをもたらしてくれます!

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