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ベートーヴェン:
合唱幻想曲(ピアノ・合唱・管弦楽のための)

オットー・クレンペラー指揮 
ニュー・フィルハーモニア管弦楽団・合唱団 


交響曲第5、6番と同じ1808年に完成されたもので、

初演は同年12月、ベートーヴェン自身の企画によってアン・デア・ウィーン劇場で行われました。

その時のプログラムは全て未公開の新作で、

前述の交響曲第5、6番に加え、

ピアノ協奏曲第4番、

ミサ曲ハ長調からの抜粋、

他にもピアノ曲、声楽曲など計8曲!

しかし、厳冬期の会場での4時間にも及ぶ意欲的なコンサートは、

リハーサルの不足もあったのでしょうが、

作曲者の意に反して、惨憺たる失敗に終わったと伝えられています。

後世クラシック音楽の定番として、

「運命」「田園」の名で多くの人に愛聴され続けている名曲たちの船出も、

決して順風満帆ではなかったようです…。


この曲は、前述したコンサートの締めくくりの曲として、ベートーヴェン作品としては珍しく速筆で、わずか半月ほどで仕上げられたとか。

十分な校訂がなされなかったせいか、曲の構成が単純で、捻りもなく、大らかな芸術讃歌と思われ、

そのために、演奏される機会も少ない作品です…。

ただ、一聴すれば「第9の原点?」と思われるほどに、歓喜の歌にそっくりなのが、興味深いところ…。


いかにもベートーヴェンらしく、気高い理想を掲げたような重厚なピアノのソロで開始されますが、

次第に饒舌さを加え、やがてオーケストラとピアノが対話する協奏曲形式に進展すると、

歓喜の歌を思わせる変奏主題が、独奏ピアノによって提示されます。

祝典的な内容の変奏が、ピアノ協奏曲的に進行!

終盤には、この変奏主題が一層光を浴びて、輝かしい四重唱によって登場し、高らかな合唱へと移行していきます。


エントリーするのは、録音当時25歳だったバレンボイムのピアノと、クレンペラー/ニュー・フィルハーモニア管による演奏。

正直申しますと、これまで聴いてきたこの曲は、華やかなだけで深みが感じられないため、ベートーヴェンの駄作かと思っていたのですが…。

高貴で穏やかなクレンペラーの指揮のもと、

水を得た魚のように活き活きと躍動する、若きバレンボイムのピアノ、

そして輝かしい四重唱と合唱!

これらがが三位一体となって静かな感動をもたらしてくれた、素晴らしい演奏でした!

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