17〜18世紀のロシアで、実際に起こった事件を題材にした、ムソルグスキーの未完のオペラです。
初代皇帝ピョートル一世(1672-1725)は、ロシアを東方の辺境国家から脱皮させることを目標に、
スエーデンからバルト海域、及び黒海海域へと覇権を拡張。
さらに、国内の勢力を自ら集中すべく、ロシア正教会を国家の管理下に置いたり、
経済や行政においても西欧化を推進するために、外国人を多数徴用し、国家体制の効率化を図りました。
しかし、ホバンスキーを中心とする伝統的な礼拝形式を重んじる古儀式派は、これらの政策に反旗を翻しましたが、
激しい迫害を受けて挫折し、
集団自決へと追い込まれるという、陰惨な幕切れとなった事件です!
そんな史実を基に、ムソルグスキー自身が台本を書き、1872〜80年にかけて作曲を続けましたが、
1881年、未完のままに他界…。
翌年、遺稿を引き取ったR=コルサコフによって、多くの削除や改作が施されることによって完成されました…。
現在では、自筆のピアノ譜等を基にして出来る限り原曲に忠実に書かれとされるショスタコーヴィチ版が、実用譜として使用されています。
今日エントリーする第4幕間奏曲は、リムスキー=コルサコフ版で演奏されています。
足枷を引き摺りながら歩むような重々しいティンパニーの響きの上を、胸が張り裂けるような悲痛な旋律が奏される、
徒歩で流刑地へと強制移送されるような、救いの見いだせない音楽!
「シベリアの野の風景画」と呼ばれるもので、
この陰惨な事件を象徴するかのような場面転換の音楽です。
演奏は、カラヤン/ベルリンフィルによるもので、
1967、71年に録音されたオペラ間奏曲&バレー音楽名曲集に収録されています。
絶妙にコントロールされた音量のティンパニーが響く中、張り裂けるようなストリングスが…。
4分余りの短い間奏曲ですが、実に聴き応えのある名演だと思います。