自身のお気に入りの作品だったようで、
ウィーンに移ってからも、自らが指揮して、しばしば演奏されたと言われています。
演奏される機会の少ない作品だとは思いますが、
C.クラーバーやムラヴィンスキーといった大物指揮者の演奏がディスクとして残されていることからも、
この作品に魅力を感じる演奏家や音楽愛好家も、少なからずいらっしゃると思います。
モーツァルト学者のド・サン=フォアは、この作品を「美しい夏の日の喜びに満ちた一幅の絵」に譬えて、『パストラール・シンフォニー』と呼んだとか(モーツァルトのいる部屋:井上太郎著より)。
私がこれまでに聴いた中では、(正規盤ではないようですが)C.クラーバー/ウィーンフィルの、颯爽として、姿形が洗練されて、表情が繊細且つ愛らしい演奏を好んでいました…。
今日聴いたクレンペラー/ニュー・フィルハーモニア盤は、
朴訥ですがリズムのメリハリがはっきりしているために、
どの演奏よりもモーツァルトらしい愉悦感が伝わると同時に、
前述したパストラールな雰囲気に満たされた演奏!
【第1楽章:Allegro assai】
きっぱりとメリハリがついた表現で開始されますが、
鳥の鳴き声を思わせる木管楽器のくっきりとした、蠱惑的で愉悦感溢れる音色の美しいこと!
展開部での、大気が物憂く漂うような趣の部分は、
よーく聴くと、「ジュピター交響曲」終楽章のフーガの動機とそっくりです!
【第2楽章:Andante moderate】
歌い交わす木管楽器は、鳥たちの囀りか、恋人たちの愛の囁き…。
田園に訪れる、穏やかな夜の世界を思わせる、ロマンティックな音楽と聴こえます。
【第3楽章:Menuetto】
毅然として、感動を湛えたメヌエット主題!
対照的なトリオ部は、優雅で穏やかな旋律に寄り添うバスーンの素朴な響きが何とも言えない味わいを添える、魅力溢れる楽章です!
【第4楽章:Allegro assai】
弾むように刻まれるリズムからは、モーツァルト特有の躍動的な愉悦感が迸り、
開放的な歓びに溢れた、素晴らしい音楽が展開されます!
これまでクレンペラーのリズムは重いという先入観念から、彼のモーツァルトには食指が動かなかったのですが…。
まさに「目(耳)から鱗…」で、
新しい発見を求めて、氏のモーツァルト演奏に耳を傾けたいと強く思いました!