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W.A.モーツァルト:ピアノ協奏曲第9番「ジュノーム」

ゲザ・アンダ(指揮・ピアノ)  
ザルツブルク・モーツァルテウム・アカデミカ 


1777年、21歳のモーツァルトが書いたピアノ協奏曲の分野での、最初の傑作と評されています。

「ジュノーム」と呼ばれているのは、当時ザルツブルグに滞在していたフランスの女流ピアニスト、ジュノームの注文によって書かれた作品故…。

そのせいか、独奏者の存在を聴き手に印象づける工夫がなされているように思われます。

いきなりピアノソロで開始される第1楽章も然りですが、

第3楽章で、ブッフォ調の転がるように軽やかなプレストで開始され、途中テンポをガラリと変えて、澄ました表情で独白を始める、独奏ピアノの意外性!

「ジュノームという魅力あるフランス女性から受けたそのままの印象を、モーツァルトが天真爛漫に音楽に仕上げたのでは…」と思えるような、自由闊達な作品と感じられますが、

作品としての完成度は、まさに奇跡とも思われるもの!

ゲザ・アンダの弾き振りによる、ザルツブルク・モーツァルテウム・アカデミカの演奏をエントリーします。


【第1楽章:Allegro】

前述したように、いきなり独奏ピアノによって開始される第1楽章は、

明るくって、のびやかで、気高くって、

それでいて、凛として生真面目で…!

それ故に、ほのぼのとしたユーモアが漂う演奏です。


【第2楽章:Andantino】

仄暗さが底辺に流れ続けるこの楽章ですが、

素直で、恣意が全く感じられず、どこまでも透明で清涼感溢れるアンダのピアニズムからは、

爽やかさの中に、滴るような寂寥感と愛らしさが漂います!

21歳の青年にこれほどまでの音楽を書かせたジュノームという女性は、一体どんな人だったのかと思うほどに、素晴らしい曲であり演奏です!


【第3楽章:Rondo(Presto)】

ピアノとオーケストラのかけ合いが、まるで活き活きと饒舌なお喋りを愉しむような、そんなロンド主題で始まりますが、

中間部では、唐突にテンポを落として、主部とは何ら関わりがないかのように、澄まし顔で独白を始める趣…。

この、びっくりするような意外性をもって語られる中間部の、何と魅惑に満ちていること!

一度聴いたら、決して忘れることができない、強いインパクトを持った音楽です!


アンダのピアノ協奏曲全曲録音中でも、ピアノの美しさと闊達さという点で白眉とも思われるこの演奏!

是非とも、一度はお聴きになることをお薦めします!

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