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ベートーヴェン:大フーガ 変ロ長調 op.133(弦楽合奏版)

オットー・クレンペラー指揮  フィルハーモニー管弦楽団 


当初は、全6楽章から構成される弦楽四重奏曲第13番の終楽章として書かれた作品ですが、

当時の演奏者にとっては、大変に困難な技術が要求され、これだけを演奏するのでも大変なエネルギーを要する上に、

曲自体が内省的なために、聴衆にとっても極めて難解と映り、支持されることは殆どありませんでした。

そのために、出版社からの強い要請を受けて、不本意ながら新たな終楽章を書かざるを得ませんでした。


申すまでもなくベートーヴェンの後期弦楽四重奏曲は、いずれもが矛盾し拮抗するものをも全て包み込むような大きさを有しており、

「自己の内面を深く見つめ、自然や宇宙との一体化を目指した、時空を超えた作品」と評価されています。

中でも「大フーガ」は、

バッハによって打ち立てられたフーガ形式の知性的な論理性と、

自由に溢れ出る多彩な楽想が絶妙に合体した、

類稀な壮大さを有した作品と感じます。


エントリーするのは、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロにコントラバスが加えられた弦楽合奏版を、クレンペラー指揮するフィル・ハーモニア管の演奏で!

本来弦楽四重奏のために書かれた作品ですが、

コントラバスを加えた弦楽合奏版で聴くと、楽想が立体的に浮かび上がり、

微塵たりとも揺るがせない堅固な構成感が鮮明になると感じられます。

その中で自由に羽ばたく楽想は、

時に力強く漲る志を感じたり、

時に舞曲的な愉悦を覚えたり、

時に静謐さに包まれた宗教的法悦に身を置き、

時に全てのものを根こそぎ覆すような力に圧倒され…。


重厚感に溢れ、理解の及ばぬほどの想像を絶する高みに位置するこの音楽!

私にとっては弦楽合奏版、とりわけクレンペラーのこの演奏が、理解するには及ばないものの、最も親しみを覚えるのです…。

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