滞在した家の娘さんで、「とても可愛らしくて、ピアノが上手な」18歳の少女に出会います。
このピアノのソナタは、その出会いによって構想され、一気に書き上げられて、
その地を離れるに際して、彼女に贈ったと言われています…。
若き(21歳)シューベルトが、彼女に魅せられて、(多分)プラトニックな胸のときめきを覚えたこと、
曲を聴けば容易に推測できると思います…。
同じくシュタイアー滞在中に構想された、有名なピアノ五重奏曲「鱒」と共に、シューベルト初〜中期の作風を代表する作品であり、
彼のピアノソナタ中、最も親しみ易く、人気の高い作品とされています!
エントリーするのは、田部京子が1999年にセッション録音した演奏!
メンデルスゾーンの「無言歌集」や、ドビュッシーの「アラベスク」などで熟年親父の胸をときめかせてくれた、いじらしいほどに可憐な女性像を、
このシューベルトでも髣髴させてくれるのです!
【第1楽章:Allegro moderate】
冒頭から秘めやかな恋心を思わせるような、愛おしさに溢れた旋律…。
静かな水面に煌めく陽光のように、澄みきった音色の繊細な美しさ!
【第2楽章:Andante】
ひとり物想いに耽りながら、不安げにあれこれと考えを巡らせる、
触れれば壊れそうな繊細な心が表現された曲であり演奏です。
フレーズごとに愛らしさが滲み出る、田部さんならではの見事な表現!
【第3楽章:Allegro】
無邪気で幸せいっぱいなのですが、ふと心の迷いが…。
淑やかさにあふれた、愛らしい終楽章です。
「シューベルトらしい愛らしい旋律に溢れた作品」ということで、私は田部さんの演奏を好んで聴いています。