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シューベルト:ピアノ・ソナタ第13番 イ長調 D664 

田部 京子(ピアノ) 


1819年、休暇を取ったシューベルトは、友人と二人でオーストリア北部のシュタイアー地方を訪れましたが、

滞在した家の娘さんで、「とても可愛らしくて、ピアノが上手な」18歳の少女に出会います。

このピアノのソナタは、その出会いによって構想され、一気に書き上げられて、

その地を離れるに際して、彼女に贈ったと言われています…。

若き(21歳)シューベルトが、彼女に魅せられて、(多分)プラトニックな胸のときめきを覚えたこと、

曲を聴けば容易に推測できると思います…。

同じくシュタイアー滞在中に構想された、有名なピアノ五重奏曲「鱒」と共に、シューベルト初〜中期の作風を代表する作品であり、

彼のピアノソナタ中、最も親しみ易く、人気の高い作品とされています!


エントリーするのは、田部京子が1999年にセッション録音した演奏!

メンデルスゾーンの「無言歌集」や、ドビュッシーの「アラベスク」などで熟年親父の胸をときめかせてくれた、いじらしいほどに可憐な女性像を、

このシューベルトでも髣髴させてくれるのです!


【第1楽章:Allegro moderate】

冒頭から秘めやかな恋心を思わせるような、愛おしさに溢れた旋律…。

静かな水面に煌めく陽光のように、澄みきった音色の繊細な美しさ!


【第2楽章:Andante】

ひとり物想いに耽りながら、不安げにあれこれと考えを巡らせる、

触れれば壊れそうな繊細な心が表現された曲であり演奏です。

フレーズごとに愛らしさが滲み出る、田部さんならではの見事な表現!


【第3楽章:Allegro】

無邪気で幸せいっぱいなのですが、ふと心の迷いが…。

淑やかさにあふれた、愛らしい終楽章です。


「シューベルトらしい愛らしい旋律に溢れた作品」ということで、私は田部さんの演奏を好んで聴いています。

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