この演奏をLPで初めて聴いたのは、もう40年以上前のことです。
当時大学生だった私は、
余裕綽々しかし壮大に鳴り響く金管楽器の響きから、北欧の大自然やそこに見られる壮大な日の出や落日を髣髴、
何としても実演で聴きたいと思うほど、恋焦がれたものでした。
翌年の1970年、同コンビが大阪万博の記念公演に来日することが決定!
5夜にわたるベートーヴェンの交響曲チクルスは、いち早く発表されましたが、
チクルス後の最終日のプログラムが未定のまま、チケットが発売されました…。
未定のプログラムにシベリウスの第5番が演奏されることに期待をかけた私は、
クラブ活動やゼミの合間を縫ってアルバイトに精を出し、大金をはたいてようやくチケットを購入しました…。
大いなる期待と不安が同居した、プログラムが発表されるまでの半年間でしたが、
ようやく発表された曲目が、当時好みでなかった「アイネ・クライネ・ナハトムジーク」「ブラームスの交響曲第2番」に加え、「日本初演の現代音楽」と知った時には、
正直「最悪!がっかり…」と思いました!
何十回となく聴いたこの演奏ですが、未だに鳥肌が立つのは、
名演であることに間違いはないにしても、「あわよくば実演を!」とのいう夢が叶わなかったせいかもしれません…!
【第1楽章】
遠雷を思わせるティンパニが鳴り響き、北欧の厳しい自然を思わせつつも、ホルンが奏でる牧歌的な響き。
そして様々な木管がファンタジックに生あるものの目覚めを感じさせつつ、次第に力強さを増していきます!
物想いに耽るようなファゴットの独白がそれに絡みつつ、やがて地平線の彼方から壮大な日の出が!
静かな感動が湧きあがる、この演奏の前半部の白眉です!
それに続く民族舞曲風のスケルツオ部は、愉しげに華やかな式典を盛り上げていきます。
【第2楽章】
素朴で穏やかな主題とそれに続く変奏曲は、静かに淡々と進んでいきます。
緩急の変化を恣意的に強調するカラヤンの演奏は、しみじみとした味わいの点でやや不満を感じるのですが…。
【第3楽章】
息の長いうねりによって、広壮な雰囲気と力強いエネルギー感をじっくりと盛り上げていくカラヤンの絶妙な指揮ぶりは、
クライマックスに至っては、地平線に沈みゆく壮大な落日を見るような、感動的な演奏!
前述した金管の朗々たる響きには、初めて聴いてから40数年が経過した今も、鳥肌が立つほどの感動が!
北欧の指揮者が演奏するシベリウスとは一線を画し、金管を鳴らし過ぎとお感じになる方もいらっしゃるかと思いますが、
感動の大きさという点においては、この演奏に勝るものはないと思います。