オネゲル自身は、「周囲からの盲目的力に曝された人間の孤独感と、訪れる幸福感・平和への愛・宗教的安堵感との戦いを、音楽によって表わした」と語っているそうです。
そして、曲の持つ宗教的な性格を表わすために、“典礼風”という副題を付け、
3つの楽章それぞれにも、カトリックの典礼から採った「怒りの日」「深き淵より」「我らに平和を」という、具体的な内容を示すタイトルが示されています。
第1次世界大戦では、兵士として戦場に赴き、
第2次世界大戦当初のパリで、ナチス・ドイツの占領下に置かれた体験を持つオネゲルの、
現代社会への警告と、平和を希求する心情が織り込まれた作品ということでしょう。
私がこれまでに聴いてきたオネゲルの印象は、音のエネルギー感に包みこまれて、それに浸りながら快感を覚えるというもの。
交響曲第3番に関しても、その辺りは同様なのですが、
それまでに書かれた第1、2番と比べると、対象が森羅万象に拡大されたようで、それ故に、一層雄渾壮大なエネルギーを感じるのです!
洗練された響きで旋律を美しく歌わせたデュトワ/バイエルン放送響の演奏は、上述したメッセージよりも、音楽を聴く快感に酔いしれることが出来る、素晴らしいもの!
【第1楽章:「怒りの日」Allegro marcato】
音がぶつかり合い、激しくスパークする冒頭部!
次第に膨れ上がり、余裕をもって突進するエネルギー感!
その心地良い力強さは、恰も高速道路を高排気量の車に身を委ねて疾走する趣が…!
【第2楽章:「深き淵より」Adagio】
春の宵の大気に漲る木々の芽吹きの気配や、雪に埋もれた地の中から蠢きの気配が…。
物音一つしない闇の世界で、今まさに躍動を開始する生命の気配に、幸福感が漲ってくる楽章です!
【第3楽章:「我らに平和を」Andante】
抵抗しようのない巨大な力の行進!
風を巻き起こし暗雲立ちこめる雰囲気!
全てを粉砕した後には、神秘的な静寂が漂い…
そこから、新たな生命が芽生える…。
音楽を楽しみ、その余韻でオネゲルが曲に込めたメッセージに思いを巡らせる、
そんな滋味深さを感じさせる、素晴らしい曲であり演奏だと思います!