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F.メンデルスゾーン:交響曲第3番「スコットランド」

F.コンヴィチュニー指揮  ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管 


1829年、初めてイギリスに渡った20歳のメンデルスゾーンは、

滞在していたロンドンを離れてスコットランドへ旅行した際に、自然や風物に感銘を受けました。

とりわけ、「悲劇の女王」と言われたメアリー・スチュアート (1542-87:父である国王の死により、生後6日で王位を継承したスコットランドの女王)ゆかりの城址に佇んで、栄枯盛衰の歴史に思いを巡らせ、交響曲第3番の開始部分を着想したとか!

しかし、当地を離れてからは容易に筆が進まず、完成したのはそれから13年後の1842年!

自身が率いるライプツィヒ・ゲヴァントハウス管を指揮して初演されました。


今日エントリーするのは、メンデルスゾーンゆかりのオーケストラをコンヴィチュニーが指揮した演奏。

悠揚迫らぬテンポで奏でられる、北ドイツの森林を思わせる“古色蒼然”たるゲヴァントハウスの重厚な響きの中から、

若きメンデルスゾーンの脳裏に深く刻み込まれたのであろうスコットランドの歴史や風景、それに民族音楽などが懐かしく聞こえてくる、実に味わい深い名演です!


【第1楽章:Andante con moto-allegro un poco agitato】

月の光に照らしだされた城址に佇み、人の世の栄枯盛衰を思う、

そんな物寂しさが伝わってくる、印象的な序奏部!

哀愁を湛えた民族色が漂う第1、2主題は、我々日本人にとって懐かしさを覚える旋律…。

荒涼とした原野に吹き荒ぶ嵐、時折雲間からこぼれる月の光…、

“音の風景画家”の面目躍如たる楽章です!


【第2楽章:Vivace non troppo】

クラリネットが奏でる軽快で、どこか郷愁を覚える民族舞曲風の旋律は、バグパイプの音色を思わせるもの。

「蛍の光」「故郷の空」「アニーローリー」などで馴染んだ、スコットランド民謡にも通じる懐かしさを覚えます。


【第3楽章:Adagio】

古の栄華を懐かしむように回顧する、センチメンタルな哀愁を漂わせた第1主題。

ホルンの響きに導かれて登場する第2主題は、亡き女王への追悼の音楽でしょうか!

青年期特有のメランコリーが感じられます。


【第4楽章:Allegro vivacissimo】

勇壮で戦闘的な第1主題と、オーボエが奏でる美しくメランコリーな第2主題。

古の歴史が走馬灯のように駆けめぐる、そんな趣を湛えた懐かしさを覚えます。

曲がいったん収まり、想い出が明滅するように振り返られた後、

コーダ部では、地の底から湧き上がるような壮大な感動が!

一聴をお薦めしたい演奏です。

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