この辺りの経緯は、前後に書かれた有名なスラブ舞曲第1&2集と全く同様…。
「伝説」というタイトルからも窺えるように、
全10曲は、主部にはおおむねスラブやボヘミアの民族舞曲が、
そして中間部には民族の歴史にまつわるかのような神秘的・幻想的・懐古的な雰囲気が織り込まれた作品集…。
伝説的な英雄や、民族の勝利を描いたという類の曲集ではなく、
滔々とした歴史の流れに身を置いて、私的随想を物語るような趣が強く、
それ故に劇的な盛り上がりこそ希薄ですが、
いかにもドヴォルザークらしい穏やかさに支配された佳曲揃いです!
全曲を演奏には40分以上を要するために、正直言って、通して聴くにはしんどさを覚えてしまうのですが、
それでも前半部には、ほのぼのとした愛着を覚える作品が並んでいます。
土俗的で力強い民謡風の旋律に加えて、日本の祭囃子を思わせるような趣が漂う第1曲!
黄昏時の田園風景に、郷愁を呼び覚まされる第2曲。
哀愁漂うスラブ舞曲風の主部と、牧歌的な穏やかさが漂う中間部との対比が味わい深い第3曲。
古の栄華を懐古するような趣深い主部と、中間部にスメタナの「高い城」を思わせる、哀愁漂うボヘミア風舞曲が流れる第4曲…。
クーベリック指揮するイギリス室内合奏団の演奏は、ゆったりとしたフレーズと、小編成故の爽やかな音色が素晴らしい演奏。
それぞれを単品で慈しむように味わっていきたい、そんな曲であり演奏だと思います。