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A.ドヴォルザーク:伝説(管弦楽版)

R.クーベリック指揮  イギリス室内管弦楽団 


「伝説」と名付けられた10曲から成るこの作品は、1881年に4手ピアノのために作曲されましたが、人気が高かったために同年管弦楽版に編曲。

この辺りの経緯は、前後に書かれた有名なスラブ舞曲第1&2集と全く同様…。

「伝説」というタイトルからも窺えるように、

全10曲は、主部にはおおむねスラブやボヘミアの民族舞曲が、

そして中間部には民族の歴史にまつわるかのような神秘的・幻想的・懐古的な雰囲気が織り込まれた作品集…。

伝説的な英雄や、民族の勝利を描いたという類の曲集ではなく、

滔々とした歴史の流れに身を置いて、私的随想を物語るような趣が強く、

それ故に劇的な盛り上がりこそ希薄ですが、

いかにもドヴォルザークらしい穏やかさに支配された佳曲揃いです!


全曲を演奏には40分以上を要するために、正直言って、通して聴くにはしんどさを覚えてしまうのですが、

それでも前半部には、ほのぼのとした愛着を覚える作品が並んでいます。

土俗的で力強い民謡風の旋律に加えて、日本の祭囃子を思わせるような趣が漂う第1曲!

黄昏時の田園風景に、郷愁を呼び覚まされる第2曲。

哀愁漂うスラブ舞曲風の主部と、牧歌的な穏やかさが漂う中間部との対比が味わい深い第3曲。

古の栄華を懐古するような趣深い主部と、中間部にスメタナの「高い城」を思わせる、哀愁漂うボヘミア風舞曲が流れる第4曲…。


クーベリック指揮するイギリス室内合奏団の演奏は、ゆったりとしたフレーズと、小編成故の爽やかな音色が素晴らしい演奏。

それぞれを単品で慈しむように味わっていきたい、そんな曲であり演奏だと思います。

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