第8番を発表後、作曲家自身から「祖国の勝利と国民の偉大さを讃える合唱交響曲を製作中!」とのオフィシャルな発言があったために、当局もそんな作品を待望していましたが、
発表されたのが、人を食ったように軽妙洒脱な交響曲!
スターリンを揶揄するものと、当局の逆鱗に触れ、ジダーノフ批判にも曝されたショスタコーヴィチ…。
自らに向けられた批判を払拭するために、国家の大自然改造計画の一環として行われていた植林事業を讃えたオラトリオ「森の歌」を発表し、
危うく一命を取り止めたと言われています…。
「交響曲第9番が書かれた意図は…?」と考えても、所詮は下種の勘繰りでしかありませんので割愛させていただきますが、
今日エントリーするゲルギェフ/サンクト・ペテルブルグ管の演奏からは、全曲にわたって諧謔を弄した風刺が明快に聴き取れる、聴き手にとっては楽しい演奏!
【第1楽章:Allegro】
底なしに楽天的でハイテンションで、ハチャメチャな陽気さを伴なった音楽。
終結部には、人を食ったような雰囲気が漂います。
【第2楽章:Moderate-Adagio】
冒頭、クラリネットが寂寥とした雰囲気を醸します。
曲が進むにつれて、美しくはあるのですが、感傷や風情の感じられない、乾燥した世界が展開されていきます!
【第3楽章:Scherzo】
前楽章から一転して、底抜けに明るく、狂気のように突進していく音楽が…。
【第4楽章:Largo】
切れ目なしに、重々しいトロンボーンとチューバの響きで開始され、シンバルンの一撃で失意のどん底に叩き落とされる!
寂寥とした雰囲気を醸す、ファゴットの独白が印象的です!
【第5楽章:Allegretto】
休みなく、ファゴットのとぼけた主題が奏され、再び明るさが見え始める終楽章。
次第にスピードが増し、どんちゃん騒ぎの行進曲に哄笑までもが加わって歓喜の渦が高まり、絶頂に達して曲は終わります。
作曲者の意図云々など考えず、ひたすら音を聴くことによって、超一級の諧謔味が楽しめるゲルギエフの演奏でした!