最近聴いたCD

ショパン:ポロネーズ第6番「英雄」 

サンソン・フランソワ(ピアノ) 


ショパンは、その生涯にピアノ独奏用のポロネーズを16曲作曲したそうですが、そのうち生前に出版されたのは、1835年以降に書かれた7曲のみ。

これらは、「ワルシャワ内戦により故国を失ったショパンが、愛国的な心情を託して作曲した」とされ、

それ以前に書かれたものは、ひたすら超絶技巧を誇示する、或いは有名な旋律をポロネーズのリズムでパラフレーズしたものばかりで、

ショパン自身も、自作として重きを置かなかったようです。


今日エントリーする「英雄ポロネーズ」は、

マジョルカ島で肺病を悪化させ、パリへ戻ったショパンが、

夏季をフランス中央部のノアンにあるサンドの別荘で、静かで創造的な日々を過ごすことが出来た1843年に書かれたもの!

そんな環境が、彼にはプラス面に働いたのでしょうか、

逞しく、健康的で壮麗な内容を持つこの曲は、

演奏技術の点からみても、ショパンの最高傑作の一つと評価されています。


若い頃は「雄々しくて、カッコ良い曲だなぁ!」と思っていましたが、

いつの頃からか、ひたすら内省的なショパンに惹かれている私にとって、長らく食指が動く作品ではありませんでした。

「たまには…」と物見遊山な気持で、何種類かのディスクを聴き較べてみたのですが、

その中でフランソワ盤だけが、解釈の違いが際立っていて、興味を引かれました。

「英雄」のイメージからは程遠く、冒頭から祖国を失った悲痛な心境や、孤独感が伝わってくる演奏です!


「ショパンの愛国心の表れ」と評される力強いマズルカのリズムが、

人それぞれに雄々しく、或いは格調高く、或いはナルシスティックなまでに感動を湛えて演奏される中、

フランソワの演奏は、曲想とは合致しないようにも思えましたが、それなりに面白く聴くことが出来ました。

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