最近聴いたCD

A.ドヴォルザーク:弦楽六重奏曲 イ長調 

スメタナ弦楽四重奏団
J.スーク(1stヴィオラ)  J.フッフロ(1stチェロ) 


1875年に長女を、前年の1877年8月に次女、同年9月には長男を相次いで亡くしたドヴォルザークですが、

この時期の作品に、「スターバト・マーテル」を始めとして、深い悲しみに心が閉ざされたものが多いのは仕方ないことでしょう。

しかし1878年の5月に、僅か2週間ほどで書き上げられた「弦楽六重奏曲」は、間もなく誕生する我が子への思いが込められていたのでしょうか。

一抹の寂しさを感じさせつつも、全体としてはドヴォルザークらしい民族色に彩られた中にも、ほんのりした温かさが漂う穏やかな作品に仕上がっており、

その雰囲気は、同じ楽器編成(ヴァイオリン・ヴィオラ・チェロ各2)のブラームスの弦楽六重奏曲1、2番と共通しているように思うのですが…?


スメタナ四重奏団に、スーク・トリオのJ.スーク(va)・J.フッフロ(vc)の二人を加えたこのディスクは、明るさと幸福感が漲る演奏!


【第1楽章:Allegro moderate】

穏やかな黄昏時を思わせる、穏やかな響きと懐かしい旋律で開始される第1楽章。

この楽器編成故か、他の編成では味わい難いほのぼのとした雰囲気が漂います。

郷愁を誘う旋律と、民族舞曲を思わせるピチカートで奏されるリズムが溶け合って、

ボヘミアの穏やかな抒情が醸される、大変に美しい楽章!


【第2楽章:Dumika(Elegie)、Poco allegretto】

スラブ風の憂愁を湛えた、緩やかな舞曲で開始されますが、

中間部では悲しみの中に懐かしさが蘇ってきます。

悲痛さは感じられない、穏やかな響きが印象的!


【第3楽章:Furriant、Presto】

いかにもボヘミアの舞曲を思わせる、活発ですがノスタルジーに溢れた音楽。

楽器編成に起因するのでしょうか、活発さの中に漂う穏やかな雰囲気が魅力的!

中間部には、スラブ舞曲第1集第1番(中間部)の旋律が…。


【第4楽章:Thema mit Variationen】

悲しみを引き摺るように開始されますが、やがて光が仄見えてくる主題に続く6つの変奏は、

なぜか根なし草のように、それぞれの結びつきは希薄と思えるのですが、

その茫洋とした穏やかさは魅力的なもの!

最終変奏のみ、力強さを示して曲は結ばれます。


ところで、弦楽六重奏の曲は大変に少ないようで、あとはせいぜいチャイコフスキーの「フィレンツェの想い出」くらいしか聴いたことがありません…。

ブラームスもドヴォルザークでのこの編成が醸す音色に、大いに惹かれている私…。

お薦めいただけるような曲がありましたら、ぜひご教示ください!

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