比類なき音楽的な感性に加えて、文学にも深い洞察力を有していたと言われるシューマンが、
世界文学史に冠たる地位を占める文豪ゲーテの大作に呼応して書かれた作品として、近年評価が高まりつつある作品!
」シューマンは、リストの「ファウスト交響曲」や、マーラーの「千人の交響曲」でも引用されている、クライマックスとなる「神秘の合唱(Das Ewig-Weibliche/Zieht uns hinanの部分)」から書き始め、
物語を遡るようにして全曲を完成、その後に序曲を書きあげたそうです…。
翌年(1854年)には、以前からの躁鬱症に加え、
青年期に罹患した梅毒に起因する精神障害が悪化し、ライン川に投身自殺を図り精神病院に収容され、
回復しないままに1856年に世を去ります。
その間、病床でも作曲を試みたそうですが、それらはクララによって破棄されたとか!
そのために、この序曲は、我々が耳にすることが出来るシューマン最後の作品群の一つとなりました。
これまで幾つかの演奏で聴いたこの序曲、
シューマン特有の鋭いインスピレーションが感じられない、正直言って鬱陶しいだけの曲と感じていたために、全曲を一度も聴いたことがなかったのですが、
今日クレンペラー/フィルハーモニア管の演奏を聴いて、
荒涼とした原野や、地獄に吹き荒ぶ風の音など、深い憂鬱に覆われた中から、
湧き上がる力強い意志の力や、仄見える天上の光を髣髴し、
にわかに全曲が聴きたくなりました!
「眼光紙背に徹す」が如くのクレンペラーの慧眼と、
それ故に浮かび上がる奥深いロマン的な表現に、すっかり嵌ってしまった最近の私です!