1919年に完成したこの曲は、
ジャクリーヌ・デュ・プレ(1945-87)という薄幸の天才女性チェリストのために書かれたかのように、
全篇にわたって、晩秋の夕映えを思わせる哀愁が儚く漂う作品!
エントリーするのは、バルビローリ/ロンドン響で、この曲の決定版と言われる1965年の演奏!
全4楽章は、切れ目なく演奏されます。
【第1楽章:Adagio- Moderate】
冒頭、いきなり抑え難い情念の迸りを感じさせるチェロのカデンツァで開始されます!
続く第1主題は、朦朧とした意識の中、夢と現(うつつ)の合間を彷徨うように揺れ動くオーケストラの伴奏、
そして、哀愁滲む旋律を奏でる独奏チェロの、しみじみとした繊細な儚さ!
前述した晩秋の夕映えを思わせるメランコリーに包まれます!
尚、この9/8拍子部分は、1917年に重症の扁桃腺炎を患っていたエルガーが、危険を冒して除去手術を受けた後、
痛みに苦しんでいる病床で閃き、書き留めたものだそうです…。
それに続く第2主題は、どんよりとした雲間から洩れる冬の陽射しのように、心にひとときの安らぎが感じられるもの。
抗いきれない宿命のように繰り返される冒頭主題を慰撫するように、絶妙な役割を果たしています!
【第2楽章:Lento-Allegro molto】
全てを諦めて、何かに身を委ねるような投げやりな心境を思わせる、独奏チェロのピチカートで開始される第2楽章。
独奏チェロの非常に速いスピッカート奏法は、何の目標もない苛立つ心を表現しているのでしょうか。
【第3楽章:Adagio】
祈りなのでしょうか、それとも見果てぬ夢?
時に憧れを、時に張り裂けそうな胸の内を独白し尽くすかのように、延々と語り続ける独奏チェロ!
スピーカーを通して、デュ・プレの霊感が真に迫って伝わってくる、凄絶な名演です!
【第4楽章:Allegro-Moderate-Allegro non troppo】
愉しく、活発に開始される終楽章ですが、
これを受けるようにして独奏チェロがしみじみと語る切なさは、過ぎ去りし日々への郷愁でしょうか!
幸福だった日々が、走馬灯のように蘇る中間部は、愉し気であるほどに、余計に儚さが漂うような趣が…。
コーダ部での全身全霊を傾けたデュ・プレの白熱した演奏から、狂おしいほどの憧憬が伝わってきます。
名曲であるほど、多様な解釈が成り立つと感じている私ですが、
この曲ばかりは、この演奏に尽きると承服せざるを得ない、まさに圧巻の演奏です!