メンデルスゾーン、ブラームス、(チャイコフスキー)と並び称される三大(or四大)ヴァイオリン協奏曲として、高い評価を受けていました…。
初めて聴いたのは、多分高校生の頃だったと思うのですが、
同じベートーヴェンの9つの交響曲や序曲、ピアノ協奏曲には大きな感動を受けたものですが、
この曲は旋律こそ記憶に刻まれたものの、感動することはなく、
むしろ、「退屈な曲!」と感じたように記憶しています。
全体として穏やかな幸福感に包まれていたために、劇的な盛り上がりが乏しく感じられ、
重厚長大なオーケストラ曲を嗜好していた当時の私には、物足りなく感じられたのだと思います…。
爾来半世紀、その間この曲を好んで聴くことは殆どありませんでしたし、
たまに聴く機会があっても、退屈さは払拭できないままでした。
ところが、今日ハイフェッツの独奏と、トスカニーニ指揮するNBC交響楽団の演奏を聴いて、
その凛としたたたずまいに、目から鱗の思いがしました。
1940年、デッドな音響で悪名高いニューヨークの8Hスタジオで収録されたもので、
残響が極めて少ないために余韻が漂わず、
加えて盛大なスクラッチノイズのために、耳障りは決して良くありませんが、
そこから流れてくる歌の、きっぱりと美しいこと!
「ベートーヴェンって、こんな曲も書いていたんだ」と、あらためて思い知らされた演奏でした。
交響曲第4番や、ピアノ協奏曲第4番と同時期に作曲されたと知って、納得です!
若々しく生気に溢れた推進力が、簡素な美しさを醸し、
凛とした絶世の美女の立ち姿を髣髴させる第1楽章!
ハイフェッツの鋭利な感性が、トスカニーニ率いるオケと見事に融和して、
神々しいまでに凛々しく高貴な歌が奏でられる第2楽章!
飛び跳ねるようなユーモラスな第1主題と、
ソロヴァイオリンが奏でる感傷的な第2主題との対照の妙が心を和ませる終楽章!
最初に聴いた印象に支配されて、無意識のうちに放ったらかしにしている曲、他にもあるのでしょうね、きっと!