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チャイコフスキー:交響曲第4番 ヘ短調

O.クレンペラー指揮  フィルハーモニア管弦楽団 


鉄道事業で巨万の富を気づいた亡夫の遺産を相続したフォン・メック夫人は、その遺産を芸術庇護のために使うことを誇りとした人でしたが、

1876年の12月、36歳のチャイコフスキーは、その才能に惚れ込んだ夫人から年間6000ルーブルの援助を受けるという幸運に恵まれたために、

モスクワ音楽院の教職から解放されて、作曲に専念することが出来るようになりました。

この関係は14年間続いたそうですが、

その間2人は手紙のやりとりをするのみで、一度も顔を合わすことはなかったとか…。

今日エントリーする交響曲第4番は、その援助に感謝する意味で、夫人に献呈されました。

感情過多との批判を受けつつも、重厚且つセンチメンタリズムに溢れ、シンフォニストとしての彼のキャリアを決定付けたと評される人気作品。


エントリーするのは、O.クレンペラー指揮するフィルハーモニア管弦楽団の演奏です!

前述した曲の特長に反するようですが、センチメンタリズムとは無縁とも思えるクレンペラーの解釈によって、

科せられた運命の重さと、それに苦悩し戦う男の、清廉潔白な騎士道精神が描かれたような、

チャイコフスキーの音楽からはあまり感じたことがない、男のロマンが迸る重厚壮大なシンフォニーに仕上がりました!


【第1楽章:Andante sostenuto-Moderato con anima…Allegro vivo】

冒頭のホルンとファゴットによるファンファーレからして、波乱万丈を予期させるよりも、孤独さが際立つ演奏!

この楽章は一貫して、激しい情熱よりも、運命を耐え忍ぶ男の姿が感じられます。

その分、一気に激情が迸るコーダ部が、大変に感動的な演奏!


【第2楽章:Andantino in modo di canzona】

涙も出ないほどに寂寥とした悲しみを歌うオーボエ・ソロ!

それを慰撫するように絡む管楽器の音色!

感傷が削がれているだけに、一層深い味わいが感じられます。


【第3楽章:Scherzo:Pizzicato ostinato】

弦楽器のピチカートが、幻影のような雰囲気を醸す主部。

中間部に登場するロシア民謡も、泡沫のごとくに消え去るような、儚さが感じられる楽章!


【第4楽章:Allegro con fuoco】

激情に駆られることなく、一歩づつ確信に向かった歩を進めるような、クレンペラーの悠然としたテンポ!

朗々と奏でられる、ブラスの響き!

最後は全てを肯定するが如くに、ひたすらクライマックスへと直進します!


「これがチャイコフスキー?」と違和感を抱かれる方もいらっしゃるでしょうが、

ロシアンメランコリーを捨て、ひたすら曲の核心に迫ったクレンペラーの演奏は、見事の一言に尽きると思います!

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