キリスト教の救済思想を反映した、重々しく荘厳な作品で、
初演に際しては、全幕での拍手を禁止したとか…。
バイエルン国王ルートヴィッヒ2世の援助によって1876年に完成したバイロイト祝祭劇場の特殊な音響に配慮したオーケストレーションが施された作品で、
そのためか、ワーグナーはこの劇場以外で上演されることを禁じていたそうです。
エントリーするのは、クレンペラー指揮するフィルハーモニア管弦楽団によるもの…。
これまでは、ひたすら厳かで崇高であると感じていた「第1幕への前奏曲」でしたが、
クレンペラーの演奏では、冒頭の「聖餐の動機」の厳かで静謐な弦の響きの中から、
むせかえるような官能の疼き、請い求めるような強い欲望などが、極めてリアルに浮かび上がってくるのには驚きました。
それに続く「聖杯の動機」によって心が鎮められた後、
金管によって強奏される「信仰の勧誘の動機」は、未来に対する大きな期待の拡がりが訪れる……。
この部分までを聴いて、あらためて粗筋を読み直し、曲に込められたワーグナーのフィロソフィーを考えてしまいました…。
ただ、残念ながら理解するには至りませんでしたが…。
その後、ごうごうとした激しい弦のうねりは、罪に対する苦悶や救済を希求する心を表現したものでしょうか…。
大変にドラマティックであり、且つ崇高な雰囲気に打ちのめされたように痺れてしまい、
にわかに、昔は長過ぎて聴くことができずにいた全曲を、あらためて聴いてみたいと感じ入った次第です!