作曲者唯一のチェロソナタであり、
試行錯誤を繰り返した初期から、自己のスタイルを確立する中期への過渡期に作られた作品と、位置付けられています。
交響曲、弦楽四重奏曲がそれぞれ15曲ずつ書かれている半面、
ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロのためのソナタは一曲づつしか作曲されていませんが、
にもかかわらず、それぞれが20世紀を代表する作品として、高く評価されています。
エントリーするのは、L.ハレルのチェロと、V.アシュケナージのピアノによる演奏。
それほど多くの演奏を聴いているわけではありませんが、
儚く漂う抒情性、悲劇性、そして諧謔性が混然と一体化した、
大変に美しく、その一方で小気味好い痛快ささえ感じられる演奏だと思います。
【第1楽章:Allegro non troppo】
冒頭、ピアノのアルペジョが儚さを漂わせる中、揺蕩ように歌われるチェロの響きの美しいこと!
訥々と何かを物語るようなピアノと、吐息を思わせるチェロとの対話!
最後は疑心暗鬼が生じ、葬送行進曲風の不気味さすら湛えつつ、曲は終了します!
【第2楽章:Allegro】
ハイテンションな感情を思わせる主部と、
中間部でのチェロの“ヒュー”という独特の響き(D線上でフラジオレットとグリッサンドを同時に行う特異なアルペジョ奏法)が、何とも言えない諧謔を感じさせる楽章です!
【第3楽章:Largo】
チェロによって朗々と歌われる旋律は、全ての希望を諦めた境地なのでしょうか。
諦観と苦悩が混在し、それらが堂々巡りするような、複雑な心境が表現された音楽と感じます。
【第4楽章:Allegro】
第1〜3楽章での出来事全てを一笑に付すような、豪快さと屈折した諧謔味に溢れる音楽!
ショスタコーヴィチがどういったメッセージを曲に込めたのかは不明ですが、
シニカルな表現が屈託なく楽しめる作品であり、演奏でした。