ロッシーニの影響を強く受けたと言われており、22曲のオペラ・コミックを残してはいますが、
現在でも唯一演奏されているのが、1831年に完成し、翌々年にパリのオペラ・コミック座で初演されたと言われる、この序曲!
所謂、一発屋による傑作ということでしょうか…。
ザンバという名の海賊の首領を主人公としたこの作品。
「捕虜にしたシチリア商人の娘と無理やり結婚しようとしたザンバが、以前に関係していた女性の復習にあって、海で殺されてしまう」という、
何やらヴェリズモオペラを思わせる内容ですが…。
6つの部分から構成されているこの序曲、
トスカニーニの演奏が始まった瞬間、想像を絶する鋭く荒々しいスピード感に、
いきなりカウンターパンチを食らったような衝撃に見舞われ、一気に歌劇「ザンバ」の世界へ…!
余談ですが、この一瞬の場面転換、
50年前にFM放送で、同じコンビによるメンデルスゾーンの「イタリア交響曲」第1楽章の冒頭を聴いた瞬間に、
部屋の中に南国イタリアの陽光が差し込んだように感じたこと、思い出しました!
「天才のみが成しうる至芸」と言う他に、表現のしようがないように感じます。
トロンボーンをはじめとする管楽器が悲劇を予兆させつつも、クラリネットが穏やかな雰囲気を醸す第2部。
調子の良いリズムによってもたらされる高揚感で、いつの間にやら身体ごと揺さぶられている自分に気付き思わず苦笑いするような、快楽とも言える愉悦感に溢れた第3部。
クラリネットが、愛らしい少女の面影を伝えるような第4部。
昔、NHKの音楽番組「朝の名曲」のテーマ曲として使われていた、軽やかな旋律が懐かしい第5部。
華やかな楽しさが横溢した第6部。
「トスカニーニは、“通俗名曲 (今や死語…?) ”を演奏する際でも、曲の真価を伝えるべく、決して手抜きすることはなかった」と言われていましたが、
そんな評価を改めて実感した、力の漲った演奏!
まさに「目から鱗…」で、こんなに心をときめかせてくれる面白い曲だとは、思いもしませんでした!