1815年、17歳の時に書かれた第3番も未完成、かつ出版時に「5つのピアノ曲」として紹介されたために、
1817年に完成したこの第4番が、実質的にはシューベルト最初のピアノソナタとされています。
尚、この年には第4番を手始めに、未完も含めて6曲ものピアノソナタが書かれていますが、
この理由は、ウィーンではベートーヴェンが未だ活躍しており、
ピアノソナタの分野での革命的な業績を熟知していたシューベルトは、
この分野に、容易に着手することは憚られたのでは、と推測されています…。
しかし、10歳代の頃から試行錯誤を繰り返しつつ、
20歳になったのを機会に、一気に創作活動に乗り出した、と考えられています…。
今日エントリーするのは、A.ブレンデルの演奏。
高名なピアニストが弾くシューベルトのピアノソナタを聴いて、
個々の主題やフレーズの美しさ、転調の妙などに感銘を受けることは多々あるものの、
時に、「全体的なまとまりに欠け、冗長に過ぎる」と感じることも、少なからず体験しています。
その点、ブレンデルの弾くシューベルトのソナタは、曲ごとに込められた作曲者の意図がシンプルかつ明確に表現されているために、
特にこの曲のような普段あまり馴染みのない作品を聴くと、
集中力が途切れることなく飽きずに楽しめ、説得力のある演奏だと感じるのです。
【第1楽章:Allegro ma non troppo】
どこかためらいがちに、しかし決然とした力強い歩みを思わせる冒頭部!
揺蕩ように繰り返し登場する転調は、深い憂愁の中からより高く貴い理想に燃える若者の、心の表現でしょうか。
シューベルトの熱き心が迸る、素晴らしい音楽です!
【第2楽章:Allegretto quasi andantino】
最晩年に書かれたピアノソナタ第20番終楽章にも使われた、素朴ながらも心の奥深くに刻み込まれる、歌謡的な名旋律!
死を意識したシューベルトの、彼岸への憧れの儚さが感じられる20番に対し、
こちらは、未来に向かって着実に歩む夢多き若者の憧れを表現したような、そんな趣が感じられます。
【第3楽章:Allegro vivace】
疑問を投げかけるように提示される第1主題と、
幸福感に充ち溢れた、きらびやかな第2主題が交互に提示されていくさまは、揺れ動く若者の心の表現?
可憐さとメランコリーを感じさせる、如何にもシューベルトらしい、可憐な終楽章!
ブレンデルの演奏で、この曲を愛聴するようになった次第です。