この曲の第3楽章には、ロシア革命を嫌って1918年にアメリカへ亡命する途上に立ち寄った日本で偶々聴いた、「越後獅子」の旋律が引用されていると言われていますが、真偽のほどは不明。
ただ、第3楽章冒頭部は、確かに日本的な感じがすることは事実です…。
エントリーするのはボストニコワのピアノと、ロジェトヴェンスキー指揮するモスクワ放送響の演奏。
この曲が内包するのであろう幻想性や民族色が随所に迸る、インスピレーションに溢れた演奏だと思います。
【第1楽章:Andante-Allegro】
中央アジアの広大な草原に漂うような、異国情緒に溢れるクラリネットの独奏で開始される序奏部!
澄み切った空気を突き破って疾走するような第1主題は、清々しく心地良さすら感じられます。
幻想的雰囲気を醸す不協和音、
最後には圧倒的なエネルギーが炸裂し、この楽章を締め括ります。
【第2楽章:Thema con variazioni:Andante】
とっつきやすそうなのに、どこか小馬鹿にしたような、
プロコフィエフ特有の皮肉っぽいウイットが感じられる、変奏主題。
いきなりクラッシュするような第1変奏。
ギャロップ風のリズムですが、どこか重々しさが感じられる第2変奏。
しみじみとした寂寥感の中に、幻想の世界が垣間見れる第3変奏。
オーケストラをバックに、ピアノのしみじみとしたモノローグを聴くような第4主題。
充実した内容が感じられる素晴らしい音楽であり、演奏です!
ピアノとオーケストラが絡み合いながら、情熱的にクレッシェンドしていく第5変奏。
最後に、変奏主題を奏するオーケストラとピアノが絡み合いつつ盛り上がり、靄の中に溶け入るように消えていきます。
【第3楽章:Allegro、ma non troppo】
冒頭部、弦のピッツィカートに乗ってファゴットの奏でるメロディーは、確かに日本的ですが、
全体的には、ピアノとオーケストラがぶつかり合う、エネルギッシュで情熱的な楽章。
高揚感を伴なってどんどん加速され、行きつくところを知らないかのように、激しさを増していきます!
テンポが治まり、オーケストラがじっくりと湧きあがるような情熱を奏する中、ピアノはモノローグ風に奏され、
木管がヒステリックな風評を髣髴させるように割り込んできます。
この辺りは、私的にはプロコフィエフを聴く醍醐味の一つでもあります。
丁々発止としたピアノとオーケストラがせめぎ合いつつ、充足感を満たすように盛り上がって行きます。
この曲の代表的な名盤として、アルゲリッチのピアノとアバド/ロンドン響の、めくるめくようなインスピレーションに溢れた、アクロバティックな演奏が挙げられます。
しかしこちらは、ロシア的な情緒が漂った求心力の強い名演という意味で、
この曲がお好きな方には是非とも一聴をお薦めしたいと思います。