17世紀フランスの宮廷バレーを意識したものと言われています。
バーバリズムに溢れた有名な三大バレーとは全く趣を異にしており、
全曲を通して弦楽器だけで演奏され、静謐さの中に抑制された厳粛さが漂う作品!
「ミューズ」や「アポロ」という名からも、ギリシャ神話を題材とした作品ということは推測できます。
神話に基づいてはいますが、バレーとしてのストーリー性は希薄で、
アポロの誕生や成長、それぞれのミューズの個性的な踊りやアポロとのやりとりなどが、古典バレーの伝統的形式に従って、オムニバス的に描かれた作品。
シンプルで、厳かで神秘的雰囲気がただよいますが、
時にロシアンロマンを思わせる哀愁が、
時に快楽的な愉悦感溢れる表現等々が、見事な弦楽アンサンブルによって展開されて行きます。
第1場「アポロの誕生」は、静謐かつ厳粛に開始されますが、
急激に活発さと晴れやかさが高まって行きます。
第2場第1曲の「アポロのヴァリアシオン」での、雅で且つ喜ばしげなソロヴァイオリンの表情!
モーツァルトの弦楽五重奏曲K406の冒頭部に共通する、地獄の底を垣間見るような強烈なインパクトで開始される、第2曲「パ・ダクシオン」!
第7曲「パ・ド・ドゥー」での、歩むようなテンポで粛々と演じられる舞の、優雅な音楽!
第8曲「コーダ」の、チャイコフスキー「弦楽セレナーデ」の第3曲「エレジー」を思わせる、ロマン的な哀愁!
終曲「アポテオーズ」は、アポロが神として祭られるパルナッソス山に導かれていくミューズたちの軽快な歩み。こみ上げる大きな感動が、天空へとたなびいていきます…。
斬新さを前面に出さずに、偉大な先輩作曲家への敬意と親しみを込めたパロディーとも考えられるこの作品は、
静謐さの中に余韻が漂う、奥深い味わいを持った作品だと思います!。
ドラティ指揮するデトロイト響のアンサンブルの美しい音色が、深く印象に残る演奏です。