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ストラヴィンスキー:
バレー音楽「ミューズを率いるアポロ」

アンタル・ドラティ指揮  デトロイト交響楽団  


1927〜28年にかけて書かれた、ストラヴィンスキーの新古典主義時代を代表する作品で、

17世紀フランスの宮廷バレーを意識したものと言われています。

バーバリズムに溢れた有名な三大バレーとは全く趣を異にしており、

全曲を通して弦楽器だけで演奏され、静謐さの中に抑制された厳粛さが漂う作品!

「ミューズ」や「アポロ」という名からも、ギリシャ神話を題材とした作品ということは推測できます。

神話に基づいてはいますが、バレーとしてのストーリー性は希薄で、

アポロの誕生や成長、それぞれのミューズの個性的な踊りやアポロとのやりとりなどが、古典バレーの伝統的形式に従って、オムニバス的に描かれた作品。

シンプルで、厳かで神秘的雰囲気がただよいますが、

時にロシアンロマンを思わせる哀愁が、

時に快楽的な愉悦感溢れる表現等々が、見事な弦楽アンサンブルによって展開されて行きます。


第1場「アポロの誕生」は、静謐かつ厳粛に開始されますが、

急激に活発さと晴れやかさが高まって行きます。

第2場第1曲の「アポロのヴァリアシオン」での、雅で且つ喜ばしげなソロヴァイオリンの表情!

モーツァルトの弦楽五重奏曲K406の冒頭部に共通する、地獄の底を垣間見るような強烈なインパクトで開始される、第2曲「パ・ダクシオン」!

第7曲「パ・ド・ドゥー」での、歩むようなテンポで粛々と演じられる舞の、優雅な音楽!

第8曲「コーダ」の、チャイコフスキー「弦楽セレナーデ」の第3曲「エレジー」を思わせる、ロマン的な哀愁!

終曲「アポテオーズ」は、アポロが神として祭られるパルナッソス山に導かれていくミューズたちの軽快な歩み。こみ上げる大きな感動が、天空へとたなびいていきます…。


斬新さを前面に出さずに、偉大な先輩作曲家への敬意と親しみを込めたパロディーとも考えられるこの作品は、

静謐さの中に余韻が漂う、奥深い味わいを持った作品だと思います!。

ドラティ指揮するデトロイト響のアンサンブルの美しい音色が、深く印象に残る演奏です。

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