私の場合は、必然のようにドヴォルザークの曲が聴きたくなってきます。
で、前回同様、今日もドヴォルザークの曲をエントリーすることに…。
弦楽四重奏曲第9番、1877年に次女と長男を相次いで亡くした年に書かれたもので、
彼らの冥福を祈って書かれた「スターバト・マーテル」にも相通じる、もの悲しさが漂う作品ではありますが、
その一方で第2、4楽章では、直ぐ後に作曲された「スラブ舞曲第1集」を思わせる、楽しさの中に郷愁を煽るような、或いは情熱的で力強い民族舞曲風の音楽が書かれています…。
【第1楽章:Allegro】
寂寥とした心の隙間に吹く、野の風を思わせる第1主題…。
如何にもボヘミア的な哀愁を湛えた、印象的な第2主題。
癒され難い心の傷も、大自然に包まれつつ、次第に快方に向かっていく、そんな趣の第1楽章です。
【第2楽章:Alla Polka】
愉しくもボヘミア的な郷愁を誘う、ポルカのリズム。
中間部は、晴天の草原に漂う香しい大気を感じさせる音楽が…。
【第3楽章:Adagio】
黄昏時を思わせる、抒情的な音楽。
淡々と刻まれるピチカートのリズムが、それに乗って歌われる旋律の悲しみを、次第に深めていきます。
やるせなく癒し難い悲しみが、次第に心に伝わってくる、大変に素晴らしい音楽です。
【第4楽章:Finale、poco allegro】
弾けるように力強い舞曲風のリズムと、美しく哀愁漂う旋律が交互に登場するさまは、悲しさを鼓舞するような趣が…。
コーダは、全てを吹っ切るように、テンポを上げて終わります。
ドヴォルザークを世に紹介してくれた恩人ブラームスに献呈されたというこの作品は、これ以前の弦楽四重奏曲と比較すると、曲全体が引き締まった印象を受けるのですが…。
シュターミッツ四重奏団の全集録音の中でも、とりわけ滋味深いロマンを感じた、素晴らしい演奏でした。