まだ終わっていない右目だけで見る世界と比べると、その差は歴然としたもの。
譬えて言えば、これまでスリガラスを通して、ぼんやりとした柔らかい光で見ていた世界が、
手術を境にして、突然磨き抜かれた透明ガラスを通してみる世界に変わったのですから、
慣れるまでのしばらくは、外出すると目が疲れてしまいそう…。
それでも、これまでルーペを使って読んでいた新聞が、裸眼で判読できるありがたさ!
これからは、徐々に気力も充実してくると、思います。
手術後、初めてスピーカーの前に坐って聴いた音楽が、今日エントリーするスクリャービンのピアノ協奏曲でした。
スクリャービン20歳代半ばの1896〜7年にかけて作曲されたもので、
ロシアロマン派音楽特有の翳りと憂いを含んだもので、同国の作曲家ラフマニノフを髣髴させますが、
ショパンの協奏曲のような瑞々しい爽やかさも感じさせる、ロマン的な情緒に溢れた作品です!
【第1楽章:Allegro】
冒頭、オケが奏でる物憂い旋律の中を漂う、若々しく瑞々しいピアノの音色は、
大海原に浮かぶ一艘の小舟のような趣を湛えたもの…。
ロシアンロマンの中に漂う、爽やかな抒情が印象的な、美しい楽章です。
【第2楽章:Andante】
迫りくる夕闇を描いたような、穏やかな抒情が感じられる冒頭部。
ピアノとクラリネットが、寄り添うように登場する部分の美しさは絶品!
中間部では、先の見えない運命を予兆させるような悲しみに襲われますが、
再び、穏やかさが回帰します。
ピアノの美しいアルペッジョは、夜のしじまに輝く月明りを髣髴させます。
【第3楽章:Allegro moderate】
きらびやかに奏でられるピアノと、ロシア的な抒情の限りを尽くすこの楽章は、ラフマニノフの世界を思わせます。
冴え冴えとした清冽な美しさと、濃い情念が感じられるロマン派音楽の世界が展開されます!
終結部は、ロシアの大地に沈む、壮大な夕陽を見るような感動が…。
ウゴルスキーのピアノと、ブーレーズ/シカゴ饗による演奏は、過剰なロマンに陥ることのない、今日のような快晴の下で、爽やかな秋色が漂うような趣…!
「ラフマニノフの濃厚なロマンに抵抗を感じられる方には、お薦めできる演奏だと思いま