ベートーヴェンの書いた16曲の弦楽四重奏曲の存在の大きさゆえに、
20曲に余る習作を経て、ようやくop.51の2曲(第1、2番)の完成にこぎつけたのは、1873年40歳の時でした。
彼の弦楽四重奏曲は、その2年後に書かれた第3番を含めた3曲しか残されていませんが、
そのいずれもが、一点一画にまで緻密に配慮が施されていると感じられ、
ブラームスの作品群の中でも、とりわけ愛してやまないジャンルでもあります。
第1番が、春の訪れをい感じさせる瑞々しい曲想であるのに対し、
第2番は淡い秋色が感じられる作品…。
今日エントリーする演奏は、メロス四重奏団によるもの。
明快な旋律的な美しさの重点が置かれた演奏とは異なり、
プロポーションを決して崩さず、均整のとれた繊細な響きに心を奪われる点で、
これまで聴いた彼の弦楽四重奏ンも演奏の中でも、秀逸なもの!
【第1楽章:Allegro non troppo】
初秋に黄昏時を思わせる、柔らかく厚みを持った響き!
過ぎ去りし日々を回想しつつ、安らぎを覚えるひととき。
ほのかに漂うメランコリー。
ロマン派音楽の極致とも思える、美しいひとときが味わえる名演です!
【第2楽章:Andante moderato】
心安らかな雰囲気の中に、時折迸るように湧きあがる情熱的な旋律がが印象的なこの楽章。
メロスSQの絶妙に均衡のとれたアンサンブルによって、曲の味わいが一層深まっていると感じます。
【第3楽章:Quasi Menuetto、moderato・Allegretto vivace】
主部は、深まる秋色と、
その中で風に舞う一片の落ち葉を思わせるように、迸る不安が!
トリオ部は一転して、春の日の想い出のような爽やかさが…。
【第4楽章:Allegro non assai】
喜びがとめどもなく湧きあがるような、舞曲風の瑞々しく快活な楽章!
壮年期に差し掛かっラブラームスの、充実した心境が髣髴されます。
ブラームスの弦楽四重奏曲は、確かに地味な存在であるとは思いますが、
還暦を過ぎた頃から、その味わいに共感できるようになりました。